知っていたら売らなかった!
イチオシの曲が売れれば、大儲け――韓国の若い世代の財テクとして音楽著作権への投資が急浮上しています。これまでは作詞・作曲家や歌手らの“専有物”だった音楽著作権が、一般市民の投資対象に様変わりしました。もはや「音楽は聴くものではない、投資するもの」。著作権ビジネスの現状を取材しました。(最終回)
音楽著作権の取引投資は、配当株投資とほぼ同じだ。著作権自体を取引して、相場の差益を得ることができるだけでなく、毎月配当される著作権料で収益を上げることもできるからだ。一方、この著作権への投資で、収益率5000%まで期待できるという話も出ている。どうしてこんなことが可能なのか。
音楽著作権取引プラットホーム「ミュージックカウ」は、原作者から著作権を購入して消費者に売る形を取る。例えば、Brave Girlsの「Rollin’」を見ると、ミュージックカウは2020年、「ブレイブ・ブラザーズ」の著作権を買収した。今やYouTubeで音源を再生したり、カラオケで歌をうたったりする時に発生する著作権料は「ブレイブ・ブラザーズ」ではなくミュージックカウに戻る。
ミュージックカウはここで収益を出す代わりに、これを再び分割して会員たちにオークション方式で売り戻す。「Rollin’」の場合、著作権を4782株に分割し、1株当たり2万3500ウォンで落札された。2万3500ウォンで「Rollin’」の著作権収益約0.02%を得られるという意味だ。
昨年8月の1カ月間、「Rollin’」の著作権料は総額6381万1008ウォンで、1週間当たり著作権料の収益は1万3344ウォンだった。2万3500ウォンで著作権1株を購入すれば年681%以上の配当収益を得ることになる。
著作権の取引で売買差益も得ることができる。ミュージックカウが落札した著作権は、株式のように再び個人の間でも取り引きされる。最初に2万3500ウォンで落札された「Rollin’」の現在の相場は、1株当たり84万6000ウォン。昨年8月31日には110万ウォンまで急騰した。もし、最初の競売落札者がこの時、「Rollin’」の著作権を売ったなら、46倍(収益率4681%)を超える差益を得ることができたわけだ。
莫大な収益率だ。ただし、すべての投資家がこのような収益を上げることは難しい。収益を上げるためには、大衆の音楽好み、著作権の相場の流れなど、さまざまな変数を考慮しなければならない。
「Rollin’」の人気が下火になれば、著作権料も同様に減ることになる。実際、「Rollin’」の昨年9月時点の1株当たりの著作権料は9699ウォンと、前月比28%減少した。前月31日、110万ウォンで「Rollin’」の著作権を購入した場合、著作権料の収益率は年10%台に落ちる。さらに、著作権そのものの価格も今月に入って23.1%下落した。著作権価格の下落を考えると、事実上収益が出ないということだ。
業界のある関係者はこうつぶやく。
「どんな音楽が、どう突然人気を得るのか。また急に人気が消えるのか誰も分からない。最初から『Rollin’』が逆走行(注目されてこなかった曲が何らかの理由で急浮上する現象)して大衆に再び人気を得ることになるとわかっていたら、『ブレイブ・ブラザーズ』がミュージックカウに著作権を売らなかったかもしれない。著作権者としては、著作権による小さな収益を毎月受け取るより、『ミュージックカウ』に譲り渡した方がよい場合もあるだろう」
◇投資元金も回収しづらい曲も
ミュージックカウによると、現在、同社で取引できる著作権は計920曲余りに上る。普通、人気(著作権料)が予測できない新曲や人気が下火になった1~3年以内の音楽だ。これらのうち、Rollin’のように逆走行の流れに乗って「収益率の大当り」を期待できる曲もあるが、一方、投資元金も回収しづらい曲もある。
例えば、歌手ソン・ガインの「コムンゴヤ」の場合、昨年10月15日に1株当たり3万3400ウォンで取引されたが、別の日には3万400ウォンで取引されている。著作権料も昨年3月の497ウォンから同9月の246ウォンに下降傾向だ。歌がどこかで再生され、歌われる限り、著作権の収益自体は持続的に発生する。だが、収益率は下火にならざるを得ない。
だからといって、著作権の取引を通じた期待収益(収益の期待値)すべてが不足しているとは言い難い。定番の曲の場合、著作権料の収益は絶えることはなく、ドラマOSTやリメークなどでいつ、どのように再び人気を集めるかわからないからだ。
著作権料が音源使用後、最大10カ月後に精算される点を考慮すれば、ある程度の収益予測も可能である。ミュージックカウは、2020年の投資家の平均収益率が8.7%と集計されたと発表している。
ミュージックカウの関係者はこんな見方も示している。
「音楽著作権料は、発売された年に最も多くの著作権料が発生し、徐々に減少する。だが2~3年後にも安定的にキャッシュフローが発生するロングテールという共通の形を見せている」
(おわり)
「音楽は聴くものではない、投資するものだ」はMONEY TODAYのアン・ジェヨン、ユ・スンモク、イム・ソヨン、ユ・ジェヒ、コ・ソギョンの各記者が取材しました。