北朝鮮が大陸間弾道ミサイル(ICBM)を試験発射する場合、バイデン米政権が取り出す国連安全保障理事会の北朝鮮制裁カードに関心が集まっている。ICBMは米本土への打撃が可能な兵器であり、北朝鮮が実際に発射する場合、短距離弾道ミサイルとは異なる米国の対応が予想される。
北朝鮮は19日、キム・ジョンウン(金正恩)総書記が朝鮮労働党中央委員会政治局会議で、2018年以降中断していた核・ICBM実験を再開する可能性を示唆した。韓国・国家情報院も最近、国会情報委員会に北朝鮮がICBMを発射する可能性について報告した。
北朝鮮は最近、「極超音速ミサイル」をはじめ、今年に入って6回も武力示威カードを切り出した。ただし、来月4~20日の北京冬季五輪期間中は「挑発休止期」として、その後、再びミサイルを発射して、朝鮮半島の緊張感を高める可能性が指摘されている。
特に昨年1月の党大会で言及した▽極超音速ミサイル▽超大型核弾頭▽1万5000キロ打撃命中率向上▽水中・地上固体発動機ICBM開発▽核潜水艦と水中発射核戦略兵器保有――など「国防五大課業」を貫くための「武力示威タイムテーブル」を行動に移す可能性があるという指摘だ。
金総書記が“ICBM試験発射ボタン”を押す場合、これはいわゆる「レッドライン」を超えるものだ。そのため、北朝鮮もこれを直ちに実行に移すことは難しいというのが大方の見方だ。このため政治局会議で対米政策方向を「再設定」した北朝鮮は当面、対米非難メッセージあるいは警告を通じてバイデン政権を圧迫するものと予想される。ただ、対話再開の条件として掲げた「対北朝鮮敵対政策・二重基準の撤廃」が受け入れられない状況が続けば、結局、ICBMで挑発をするという見通しだ。
また、昨年8月のアフガニスタン駐留軍の撤収で国際社会のリーダーシップに痛手を負ったバイデン政権の場合、北朝鮮がICBM発射を実行に移せば、再び「リーダーシップ危機」に局面する可能性もある。当面、北朝鮮との対話よりも、強力な対北朝鮮制裁で締めつける可能性が高いという見方が出ている。
国連安保理常任理事国である米国は、最新の国連対北朝鮮制裁決議である2397号を根拠に強力な追加的制裁の採択を進めるとみられる。
安保理は北朝鮮が2017年11月にICBM「火星15型」を発射すると、同年12月に対北朝鮮制裁決議2397号を採択した。これには「北朝鮮がICBMを追加発射する場合、北朝鮮への油類供給制限措置を追加する」という「トリガー条項」が含まれている。
トリガー条項は、安保理の自動介入を意味する。現在、北朝鮮が輸入できる油類は年間50万バレルだが、さらに減少するか、全面禁止できるという見解が出ている。実際、米国は2017年9月3日に北朝鮮が6回目の核実験を実施してから約1週間で開いた安保理会議で「対北朝鮮原油全面禁輸措置」を要求したことがある。
ただ、中国はこれまで「制裁のための制裁には反対する」と反発してきただけに、全面禁止のような「極端な措置」は安保理理事国間の議論により弱まる可能性もある。その場合、米国は「セカンダリーボイコット」(北朝鮮と取引する第三者に対する制裁)カードを取り出して、北朝鮮の支援国・中国に圧力をかけることもあり得る。
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