2024 年 12月 4日 (水)
ホーム社会新入生ゼロから14人…廃校危機から脱却、韓国のある中学校「再生物語」

新入生ゼロから14人…廃校危機から脱却、韓国のある中学校「再生物語」

堤川市提供(c)news1

かつて新入生ゼロで廃校の危機に瀕していた韓国忠清北道堤川市にある松鶴(ソンハク)中学校が、地域社会と自治体の支援を受けて復活を遂げた。その背景には、地域住民の情熱と特色ある教育プログラムがあった。

松鶴中学校は1971年に開校し、これまで6000人以上の卒業生を輩出した。しかし、2020年には新入生がわずか2人、2021年と2022年には新入生がゼロという状況に陥り、廃校の危機が迫った。この危機に、地域住民と卒業生、そして学校関係者が一丸となって立ち上がった。

2022年8月には「松鶴発展委員会」が結成され、学区内の保護者への直接的な働きかけや、教育庁への説得活動が展開された。同時に、自治体である堤川市は学校バスと奨学金の提供を通じて支援を強化。加えて、忠清北道教育庁も特例措置として堤川市内の6つの中学校を共通学区とし、住民票を移さずとも松鶴中学校への入学が可能となった。

こうした努力の結果、昨年には6人の新入生が入学し、今年はさらに12人の新入生が加わった。さらには他校からの転入生も加わり、現在の在校生数は23人に増加。来年度には新たに14人の入学が見込まれており、全校生徒数は37人に達する見込みだ。

松鶴中学校が掲げる最大の強みは、都市部の学校にはない特化プログラムだ。放課後の個別指導は「1対1」のレベルで進められ、英語の授業は外国人教師が担当する。さらに、ゴルフ、バンド活動、乗馬、ビリヤードといった多様なプログラムも提供されている。先月には日本の大阪への海外研修旅行も実施された。

また、卒業生や地域企業、宗教団体が提供する奨学金は、学業優秀者だけでなく模範的な学校生活を送る生徒にも幅広く支給されている。こうした取り組みが保護者や生徒の支持を集め、廃校の危機を脱する原動力となった。

一方で、課題も残されている。地域住民は、学校を支援するための安定的な資金確保が必要だと指摘する。特に、地域に存在するセメント工場からの学校発展資金の継続的な提供が欠かせないという。また、高齢化が進む地域において学齢人口を増やすには、マンション建設など大規模な住宅地の整備が求められている。

現在、松鶴には5000人ほどが暮らしているが、高齢者の割合が高く、人口減少は深刻な問題だ。松鶴中学校が地域にとっての新たな希望となり得るかどうかは、こうした課題の克服にかかっている。

(c)news1

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