韓国で地方から人が離れ、新たな住民が増えない状況が続き、空き家が増加して町の雰囲気が寂しくなっている。
そんな中、地方消滅の象徴ともいえる空き家を活用して事業を展開するスタートアップ「タジャヨ」が注目されている。
同社は、増加する空き家を利用した事業を立ち上げ、現在は地域経済の一端を担っている。
タジャヨは、空き家を10年間無償で借りて現代的にリフォームし、宿泊業を営むスタートアップ。契約期間が終了するとリフォームした家を元の所有者に返却する方式だ。このように地方の空き家問題を解決する一方で、規制サンドボックス制度を活用してビジネス展開を可能にしている。
韓国統計庁によると、昨年の段階で韓国の全住宅のうち空き家の割合は7.9%で、2015年の6.5%から1.4ポイント増加した。特に、済州道では2015年の9.5%から昨年は13.5%に増加し、全国で2番目に高い空き家率を記録している。この状況の中、タジャヨは2018年から空き家をリフォームして宿泊施設として運営を開始し、地域社会に活気をもたらしている。
タジャヨのナム・ソンジュン代表は、地元住民からも好評を得ていると語り、「地域の雰囲気が明るくなると、住民の方々も私たちの事業を好意的に見てくださるようになった」とみる。また、タジャヨは空き家のリフォームに伴い、防犯カメラを設置するなど地域の安全にも貢献している。
ただ、事業の初期段階では農村民宿の規制や資金調達の困難、専門人材の不足など、地方スタートアップならではの課題に直面した。ナム・ソンジュン代表は、地方自治体の意識改革が必要だと述べ、「地方でもスタートアップが雇用を生み出せるという認識が広まれば、より多くの支援が期待できる」と訴えている。
さらに、タジャヨは地方の他のIT企業と協力し、地域住民を雇用して清掃・洗濯・造園業務を担当させるなど、地域の経済活性化にも寄与している。空き家リフォーム宿泊施設の収益の一部を地域社会に還元するほか、地元の中小企業の製品を宿泊施設内で販売することで、地域経済と雇用の創出に取り組んでいる。
ナム・ソンジュン代表は「地方消滅は遠い話に聞こえるかもしれないが、現実問題として地域スタートアップの支援を強化し、予算の拡充を図る必要がある」と提案している。
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