「外交官生活で感じたことは、自分に確信がなければ相手を説得できないということです。 国際社会に『われわれは統一すべきだ』と言って助けを求めるには、統一への熱望と確信がなければなりません。確信がなければ、相手もすぐにわかってしまう」
韓国与党「国民の力」のキム・ゴン(金建)議員は「キム・ジョンウン(金正恩)総書記が『二つの民族』『二つの国家』を口にする今が、統一にとってチャンスだ」とみる。
キム・ゴン議員は35年間、外交官として活動してきた。ユン・ソンニョル(尹錫悦)政権では初代・朝鮮半島平和交渉本部長などを歴任した。
統一には周辺国の協力が不可欠であり、そのためにはまず韓国側が統一の必要性、統一がもたらすチャンスを認識しなければならない。キム総書記が南北関係を同族関係ではなく「敵対的な二つの国家」と規定したのは、北朝鮮体制が限界に達したというシグナルであり、むしろチャンスだ――キム・ゴン議員はこうみる。
「東ドイツも西ドイツとの国力格差が広がり、圧力に耐えられなくなったので『二つの民族、二つの国家論』が主流になった。北韓(北朝鮮)でも韓流が広まり、韓国の情報が住民に影響を与え、それまでの嘘が通用しなくなったので、キム・ジョンウン総書記も体制を維持するために『二つの民族、二つの国家論』を持ち出したのだ。統一の日が近づいたという意味だ」
韓国の歴史を貫く民族の夢が統一であることを忘れてはならない――キム議員はこう強調する。
「私たちは1919年、日本の植民地下において中国で臨時政府を樹立し、わが祖国に民主社会、民主共和国を建設するという一つの夢を立てた。しかし、冷戦のため、民主共和国をわが半島の半分だけに建てた。だからこそ、建国の完成とは、統一し、われわれすべての領域で民主主義体制を樹立することだ。これがわれわれが一民族として抱いた長年の夢だ。憲法に『大韓民国の領土は韓(朝鮮)半島とその付属島とする』という内容が盛り込まれたのは、この夢のためだ。夢を失った民族に未来はない」
◇「憲法が戦争を阻止する最小限の役割」
若い世代を中心に統一が必要ないと見る人が少なくない。それでも統一すべきだと思うか――。この問いに、韓国国立外交院院長を務めたことのあるキム・ジュンヒョン(金峻亨)氏=進歩系野党「祖国革新党」議員=は次のように答えた。
「統一は当然、必要だ。今の国際情勢を見ると、北韓が戦略的に非常に有利になった。戦争による統一と吸収統一があるとしたら、今の(韓国の)政権が期待している北韓の崩壊と吸収統一は不可能になった。しかし、戦争は絶対に起きてはならないので、われわれが憲法に平和統一を明記しておいたのだ。憲法が戦争を阻止する最小限の役割を果たしているのだ」
最近、イム・ジョンソク(任鍾晳)前大統領秘書室長の「南北2国家論」が政界で大きな波紋を呼んだ。これについてキム・ジュンヒョン議員は次のような意見を持つ。
「今、われわれは現実的に分断国家でありながら、憲法では領土を「韓(朝鮮)半島とその付属島」と明示している。ダブルスタンダードの状況に置かれている。誰もが心理的に『この緊張状態を解決し、一つの答えを出したい』という欲求があるかもしれない。政治家たちは答えを出したいのではないか」
キム・ジュンヒョン議員は、統一を実現するためには▽北朝鮮との信頼形成▽北朝鮮の段階的な経済成長推進▽周辺国の説得――などが不可欠だと主張した。
「もしキム・ジョンウン体制が崩壊すれば、北韓のエリートたちは集団指導体制で団結し、生き残りを模索するだろう。彼らは崩壊直前、韓国ではなく中国を選ぶ可能性が高い。親中政権を樹立し、中国に依存する方が戦略的に有利だからだ。つまり、北韓が崩壊すると、われわれが北韓に進入できると考えるが、国連がそれを禁止する場合、北韓内部は中国と結託し、その結果、北韓は中国に奪われることになるだろう」
「だから北韓との信頼関係が重要だ。ドイツが統一できたのは、東ドイツのエリートたちが『西ドイツに行っても死ぬことはない』と信じていたからだ。東ドイツで最後に統一について投票をした時、多くの人が東ドイツの崩壊を口にしたが、彼らには確信があった。しかし、北韓は状況が違うので、何の準備もせずに北韓の崩壊だけを待てば、逆説的に混乱がさらに大きくなる可能性がある」
若い世代の間には、統一時に南北間の経済力差による負担が大きいという懸念がある。この点についてキム・ジュンヒョン議員は次のような見解を示した。
「北韓の経済を徐々に成長させて韓国との格差を減らし、統一を推進することが代案になる可能性がある。経済連合または交流を通じて両国の条件が成熟したら、統一を議論してみようという主張があり、信頼も一つ一つ積み重ねていくこともできる。何よりも最も重要なのは、周辺国を管理すること。ドイツも最初からやったことは、周辺国に『われわれの統一は脅威にならない』と説得したことだ。朝鮮半島の統一が北東アジアに与える多大な波及力を考えれば、この説得プロセスは決して疎かにはできない」
(おわり)
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