韓国で、中国人と推測されるアカウントによる集団的なコメント操作疑惑が浮上し、それを防ぐための「インターネット国籍表示制」が再び議論されている。政界で関連法案が提出されたが、国会の通過は難しいと見られている。
IT業界によると、カトリック関東(クァンドン)大学のキム・ウニョン教授(警察行政学)と昌原(チャンウォン)大学のホン・ソクフン教授(国際関係学)の研究チームは、中国によるポータルサイトでの組織的なコメント操作の疑惑を指摘する報告書を発表した。研究は2022年7~8月、ネイバーやYouTubeで韓中競争産業に関する記事へのコメントを分析したものだ。
その結果、ネイバーでは中国語の翻訳調や特有のアカウント特性を持つ「中国系疑惑アカウント」77個が確認された。
これらのアカウントは、韓中間で競争が激しい電気自動車(EV)やスマートフォンなどの産業分野の記事に集中的にコメントを投稿し、韓国の産業をおとしめる内容が多かったという。こうしたインターネット上での世論操作は、韓国のみならず台湾でも中国人によるものが疑われ、議論を呼んでいる。
これに関連し、与党「国民の力」のキム・ギヒョン議員が、2022年1月と2023年7月に「インターネット国籍表示法」を発議している。この法案は、SNSやポータルサイト、オンラインコミュニティの運営者が全利用者の国籍情報を政府に提出し、コメント投稿者の接続場所やVPN利用の有無を公開するよう求めるものだ。違反者には最大5年の懲役刑または5000万ウォン(約545万円)の罰金が科される。
だが、この法案の実効性には疑問があるとの指摘も多い。ネイバーではコメントを投稿する際に実名認証が必要だが、主に韓国国内で開通された携帯電話が使用されており、VPNを利用する者を特定するには技術的な限界があるという。
業界関係者は「インターネット国籍表示制は、オンライン利用者全員の情報を政府が収集する点で問題があり、この制度を実施している唯一の国が、中国という点が皮肉だ」とコメントしている。
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