コラム
チョ・ソンフン(MONEY TODAY情報メディア科学部長)
韓国IT革新のアイコンだったカカオ(Kakao)のイメージは地に落ち、近ごろは四面楚歌だ。昨年、カカオモビリティ(Kakao Mobility )のタクシー迎車料金引き上げと、路地商圏の侵害を巡る議論で悪化した世論が、カカオペイ経営陣のストックオプション「食い逃げ」事件を引き金に爆発した結果だ。
一時、17万ウォンに達した株価は、9万ウォン台まで下落した。ネイバー(NAVER)を抜いて時価総額3位、75兆ウォンに達したカカオの時価総額も、45%減の40兆ウォンに縮小した。
時価総額の暴落よりも深刻なのは、投資家の信頼崩壊だ。金利引き上げや景気減速などの市場状況だけでは説明のできない過度な株価下落であり、これらは株主の信頼を裏切った結果だ――専門家はこう口を揃える。ついには、カカオトークを開くたびに怒りが込み上げる、というユーザーまで出てくる始末だ。
カカオ墜落の根源には、成長と利益だけを目指してきたスタートアップ式思考の限界がある。各系列会社が新規株式公開(IPO)や収益の実現に向け猛進する過程で、「カカオ」というブランドが果たすべき社会的責任と、持つべき重みを忘れてしまった。「子会社の成長に酔いしれ、社会的責任を切に感じられなくなっていた」。キム・ボムス議長は昨年の国政監査でこう述べていた。その後も系列会社の倫理観を欠いた行動が続いたため、弁明の余地がない。
挑戦と冒険を通じ、苦労して成長したのだから、それ相応の褒美は享受すべきであり、この考えは必ずしも間違いではない。カカオの経営陣は、既存の秩序を覆す革新家たちだ。だが、カカオの社会的波及力は既に、一介のスタートアップの範疇を超えている。
系列会社の急成長を目指して導入した「100人のCEO戦略」は、自律的かつ迅速な意思決定を長所としていたが、近ごろは「各自図生」(各自が自らの生きる道を探す)式の放任に近かったといわれる。
カカオの次期代表候補であるリュ・ヨンジュン氏の辞退を求める書き込みに、カカオ創立以来最も多い1900人あまりの職員が実名で同意するほど、職員らの喪失感も大きい。
カカオは先日、コントロールタワーに当たるコーポレートアライメントセンター(CAC)を設立した。また、次期代表として、未来イニシアティブセンター長のナムグン・フン氏を選任し、リーダーシップの改編に乗り出した。こうした動きは、遅ればせながらも、幸いなことだ。緩いスタートアップ集団の形態だったカカオが、本社のリーダーシップを中心とした持株会社体制に転換すると解釈されたためだ。系列会社間の協力・相互作用の創出に加え、一定の統制権を行使するという意味でもある。
実際、CACがカカオ次期代表候補のリュ・ヨンジュン氏の辞退はもちろん、系列会社の最高経営責任者(CEO)に対して、上場後2年間のストックオプションを行使を禁止し、子会社のIPOを原点から再検討するという決断は意味が大きい。CACセンター長に経営陣の長男的存在であり、総合エンタメ企業「CJエンターテインメント」(CJENM)代表出身のキム・ソンス氏(カカオエンターテインメント代表)を選任したことも肯定的な出来事だ。
一部でキム議長の腹心であるナムグン・フン代表選任を巡り、再び側近を重役に起用する「兄貴リーダーシップ」を発揮したのではないかという懸念の声もある。さらに、サムスングループの経営を統括しながらも解体された「未来戦略室」のように、過度な権力を行使して系列会社の独立経営を阻害するのではないかという見方もくすぶっている。
ただ、動揺する組職をカカオが収拾し、当面の危機を切り抜け、国民企業としての名誉回復にこぎつけるには、キム議長のより強力なリーダーシップが不可欠だ。重責を担うナムグン・フン、キム・ソンス両氏も、市場の期待に応える姿を示さなければならない。
「カカオが長い間築いてきた社会の信頼を失ってしまったことに重大な責任を感じる。未来ビジョンと包容的成長を考えるESG経営を強化していく」
リーダーシップ改編に際し、キム議長はこう語った。その言葉のように、過去の慣行と断絶し、成長と共生を考える“カカオシーズン2”をスタートさせる必要がある。それが信頼回復の第一歩だ。
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