韓国で10年以上居住する北朝鮮脱出住民(脱北者)の割合が70%を超えた。脱北者支援政策もこうした環境の変化を反映して改善されるべきだとの指摘が出ている。
韓国開発研究院(KDI)が30日に発刊した「北朝鮮経済レビュー」8月号によると、北朝鮮研究所のキム・ヨンス所長は「北朝鮮脱出住民支援政策:現状診断と改善の方向性」の中で「最近、入国する脱北者の数が急減し、10年以上韓国に居住する割合が72.0%に達し、5年未満の居住者は8.1%に過ぎない」と指摘した。
それによると、韓国に入国する脱北者は2000年代以降、増加を続け、2003~11年は年間2000~3000人の水準だった。その後は年間平均1300人台に減少し、その後の新型コロナウイルス感染の影響で、2021年には63人、2022年には67人、2023年には197人、2024年は6月末現在で105人となっている。
キム所長は「この数字は、定着10年以上の脱北者が支援政策の主要な対象であることを如実に示している」としたうえ「新たに定着させる政策も重要だが、長く定着している人々が抱える定着問題を解決するという新たな課題が浮上している」と指摘した。
韓国に入国する脱北者の急減は、新型コロナにより引き起こされたのに加え、北朝鮮での脱北取り締まり強化▽脱北を容認する者に対する処罰強化▽これに伴う脱北全般の費用増加▽脱北者が最初に向かう中国での取り締まり強化――などの要因が複合的に作用している。そのため、以前のような入国者数の回復は期待しにくいとみられる。
一方で、脱北者に関する法律によると、保護・定着支援の期間は韓国入国後5年に制限されており、支援サービスの外に置かれる脱北者がさらに増加するという新たな状況が発生している。
特に脱北者の高齢化が新たな課題として浮上している。身寄りのない一人世帯が多く、亡くなっても葬儀を営む費用や協力者もいないという事態がたびたび発生している。
キム所長は「家族や隣人と孤立している高齢世帯へのケアシステムを急いで整備する必要がある。どのような準備と対策が必要か、把握できるような実態調査が優先すべきだ」と強調している。
加えて、最近の脱北者減少により、脱北者定着教育機関「ハナ院」の運営の非経済性が問題視されている。特に男性の定着教育施設「華川第2ハナ院」の場合、すでに教育生よりも担当公務員の数が多いという。
キム所長は「今のように運営・維持するのは予算執行の効率性の観点からも説得力がない。新たな定着支援運営体制を構築するタイミングだだ」と指摘する。
(c)news1