韓国の大手ディスプレイメーカー「LGディスプレイ」が中国・広州に持つ大型OLED(有機発光ダイオード)パネルの量産技術が、中国の競合企業に流出する事件が発生した。同工場は、習近平国家主席が昨年、異例の訪問をして韓中友好を強調した場所であり、両国の経済協力の象徴とされていた。だが、この工場も中国企業による技術窃盗の標的から逃れることはできなかった。韓国企業は、中国企業の猛追を受け、度重なる技術流出によって世界市場での苦戦を強いられている。
ソウル中央地検情報技術犯罪捜査部は今月13日、LGディスプレイの元社員2人を産業技術保護法と不正競争防止および営業秘密保護に関する法律違反の容疑で逮捕・起訴した。これに先立ち、ソウル警察庁産業技術安全捜査隊は、先月、この2人を逮捕し、検察に送致したほか、共謀した現・元社員2人も同様の容疑で在宅起訴した。
元社員らは、中国ディスプレイ業界の大手企業に転職する際、LGディスプレイ広州工場の大型OLEDの量産工程や設備仕様などの核心技術を持ち出した疑いが持たれている。彼らは長期間、同じ部署で勤務し、OLED分野の重要な人材だった。特に一人は、LG電子に入社後、LGディスプレイに移籍し、20年以上にわたり大型OLEDの研究を担当していた。
警察の調査によれば、この人物は2021年上半期に中国の大手ディスプレイ企業へ転職する際、LGディスプレイ広州工場の設計図面などをスマートフォンで撮影し、中国企業に渡した。広州工場はテレビ画面に使用される主要なOLEDパネルを量産しており、LGディスプレイは2018年にこの量産工場に約5兆ウォン(約5480億円)を投資していた。
習主席は昨年4月、LGディスプレイ広州工場を直接訪問し、韓中経済協力と友好を強調した。習主席が就任以来、外国企業の工場を訪問したのは、このLGディスプレイのケースが初めてだった。当時の中国メディアは、習主席が大型OLED量産施設などを視察して「外国投資者が中国に来て、中国市場に根を下ろし、企業発展の新たな時代を創造することを希望する」と述べたと報じた。
元社員はLGディスプレイでの待遇に不満を抱いていたところ、高額な報酬を提示された中国の競合企業の誘いに乗り、転職を決意したとされる。転職後も、2022年までにLGディスプレイに勤務していた同僚と共謀し、大型OLEDの量産技術を流出させた。
韓国・国家情報院と連携して捜査を進めた警察は、元社員が国内に戻った際に逮捕した。また、元社員の犯罪収益を凍結するために、3億8000万ウォン(約4165万円)に達する資産の没収保全を申請し、裁判所はこれを認めた。没収保全とは、犯罪者が確定判決を受ける前に、対象財産を勝手に処分できないようにする措置だ。
逮捕・起訴された元社員らは、スマートフォンでLGディスプレイ広州工場のOLED量産技術図面を撮影したことは認めたものの、それは「学習目的だった」と供述しているという。
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