◇高速インターネット回線
韓国は1990年代のうちに高速インターネット回線の整備を進めていたことで、オンラインゲーム業界はスムーズに発展していった。その影響は、コンソールゲームがそれほど普及していなかった中国や台湾、東南アジア諸国に及んだ。
一方、日本国内は1990年代前半、「次世代ゲーム機戦争」と称されるようにコンソールゲームの普及が促されていた。ただ、1990年末から2000年代初頭にかけ、PCゲームのユーザーが減少し、そのPCゲームでは「美少女ゲーム」が人気だったこともあって「PCゲームはニッチユーザー向け」のイメージが定着することになった。
日本に韓国のオンラインゲームが進出したのは2000年以降だ。2001年、日本で低価格のADSLサービス「Yahoo!BB」が始まるなど、高速インターネット回線の整備が始まり、ほどなくして日本でもオンラインゲームの市場が成立するようになった。
2003年に韓国で登場した「フリー・トゥ・プレイ・モデル」のゲームが、その翌年、日本国内で普及した。「試しに無料でゲームをプレイできる」という仕組みがユーザーに受け、このモデルが日本のゲーム業界にも広がっていく。
ただ、当時、日本での主流は「プレイステーション2」などのコンソールゲームで、日本で作られたオンラインゲーム作品は数えるほどしかなかった。
◇ソーシャルゲーム
それからまもなく、日本で人気を博したのが「ソーシャル・ネットワーク・ゲーム(ソーシャルゲーム)」と呼ばれる形式のものだ。SNS上に組み込まれたゲームを意味する以外に、スマートフォン向けゲームアプリを指す場合もある。SNS上でつながっているユーザーが、ゲームを楽しんだり、ゲームを通じてコミュニケーションを図ったりできる。このソーシャルゲームが2000年代後半、Facebookなどを通じて一挙に広がった。
ソーシャルゲームはそもそもPC上で操作されるものだった。2002~03年ごろに携帯電話3G(第3世代移動通信システム)回線が普及したことを受け、モバイル端末でソーシャルゲームを楽しむ人が急増した。
さらにスマートフォンの普及が本格化するとともに2012年に4G(第4世代移動通信システム)回線が一般化すると、ゲームがより円滑にプレイできるようになった。多くのユーザーがゲームアプリをダウンロードして楽しむようになり、その結果、構築されたのが、スマホを使ったオンラインゲームの市場だ。
この新たな市場に、PCオンラインゲーム企業のほか、携帯電話のソーシャルゲーム企業、コンソールゲーム企業も次々に参入して市場は活況を呈するようになった。
スマホを中心としたオンラインゲーム市場は2015年以降、1兆円を上回っている。
◇インディーズゲーム成長の土壌
日本のオンラインゲームビジネスを見守ってきた川口氏は、業界の成長を妨げる要因として次の点を挙げる。
「日本では、いったん上場して大きなゲーム会社になると、なかなかチャレンジがしにくくなり、どうしても自社のヒットタイトル(ヒット作品)に頼ってしまう。」
具体的には――インディーズ(大手の系列に入らず、自主制作しているゲーム開発会社)のゲームのことだ。一定の収益を見込めるものであれば、こうした作品を大企業が買い取りや販売委託という形態でリリースする。
一方、欧米や韓国などでは、インディーズゲーム会社が自らゲームをリリースするケースが多い。資金調達が日本に比べて比較的容易だったり国の援助があったりする。ゲームがヒットすると会社は規模を拡大し、大企業に引けを取らない規模に成長することもある。
インディーズゲーム会社が自社作品をアピールできるコンテストは日本国内に数多くある。ただ、優秀なゲームを開発した会社がその後、発信元として一本立ちする例は限られ、多くが大手ゲーム会社の下請けになっている。「日本のベンチャーのオンラインゲーム会社ではここ10年ぐらいは、サクセスストーリーがあまりない」
つまりインディーズゲーム会社に投資をして、会社の体力をつけて、さらに優れた作品を作る――というような土壌がない。
こうした状況もあり、さらにインディーズゲーム会社がゲームビジネスに参入しにくくなっている。
キャラクターデザインやゲームの世界観など、日本からノウハウを学んだ海外の会社が発展し、それが独自の進化を遂げ、日本にゲームを配信するようになっている。「ゲーム業界のためにもインディーズゲーム会社の支援とビジネスエコシステムが必要だ」。川口氏はこう強調する。(つづく)
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