「本当に上手ですね」。人の顔をした人工知能(AI)が瞬きしながら椅子に座っている観覧客を眺めた。何を思ったのか、腕を伸ばして絵を描き始めた。
黒いペンでさっと線を引いて顔の形と肩のラインを瞬時に表現した。作業中に点描のような繊細なタッチを見せる「個人技」も披露した。瞳と髪の毛、服の柄と服のしわに明暗も入れると、立体感まで表現した。
一度動き始めたAIの腕は、来場者の似顔絵が完成するまで止まらなかった。「AIロボット」が描いた顔を見た人たちは感嘆の声を上げた。「不思議だね。本当によく描けているね」
ソウル市瑞草区(ソチョグ)の国立中央図書館で開かれている「イ・ヒョンセの道:K-ウェブトゥーン伝説の始まり特別展」は「漫画の伝説」イ・ヒョンセ氏より、「AIロボット」が人気だ。
「AIロボット似顔絵」展示体験ゾーンは朝から来場客が列をなして「AIロボット」が絵を描くのを待った。
AIロボットは人の顔と腕の形に分かれている。顔の頭頂部についたカメラが来場客の顔を認識し、腕が絵を描くという仕組みになっている。来場客の笑顔やしかめっ面から、Vサインの動作まで絵の中に表現する。しかも「イ・ヒョンセ」スタイルで描き出すのが特徴だ。
絵だけ描くのではない。AIは話もしながら来場客とコミュニケーションを取る。並んで順番が来たある来場者が「絵は何回描くの」と尋ねると、AIは客対応に慣れているかのように「あなたが初めてだ」と言って笑いを誘った。
ロボットが描いた似顔絵を受け取った大学院生のハン・ジスさんは「本当に漫画のように描かれた。AIが簡単な言葉ではなく対話ができることに驚いた」と不思議そうな表情を浮かべていた。
人々の問いかけに親切に答え、上手に絵を描く。でも機械は機械だ。展示案内員はAIに近づく人々に注意を促している。「工業用に使われるAIなので人を傷つけることもある。近づかないでください」
似顔絵体験空間のすぐそばにはタブレットPC1台とデジタルペンが並んでいた。その上には大きなモニターに白い窓が出ていた。
ある女性の来場客が座席に座ってタブレットに絵を描くと、モニターにはまるで漫画家のイ・ヒョンセ氏が描いたようなキャラクター画風で来場客の絵が再現された。AIは数秒足らずの短い瞬間に、体験客の絵を漫画のキャラクターに変えた。キャラクターの姿は正面だけでなく、上を見た姿や後ろ姿も描き出した。
似顔絵を描くAIロボットは「イ・ヒョンセAIプロジェクト」だ。イ・ヒョンセ氏は現在、ジェダムメディア、世宗(セジョン)大学などとともに生成AIに自分の作品を学習させ、既存作品のリメークとオマージュ、オリジナル作品の制作までさまざまな作品を描き出す。
国立中央図書館の関係者は「AIを体験する人も多く、体験のために来る客も多い。展示を見るために祖父など年配の方とともに体験しようと若い世代の訪問が多い」と話した。平日は150~200人、週末は200~300人程度が訪問するという。
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