米動画配信大手ネットフリックス(Netflix)が「イカゲーム」などの大ヒットにもかかわらず、各地で料金引き上げに踏み切っている。コンテンツの競争力確保に加え、世界的に拡大する「インターネット回線使用料を支払え」という圧力に備えた動きだとの指摘が出ている。
業界関係者によると、ネットフリックスは米国とカナダ地域で加入者の月額料金を約1年ぶりに引き上げた。基本プランの月額料金が米国では13.99ドルから15.49ドルに、カナダでは14.99カナダドルから16.49カナダドルにそれぞれ引き上げられた。引き上げの理由について、ネットフリックス側は「多様な、質の高いエンターテイメント体験を提供するため」と説明している。
ネットフリックスは昨年11月、韓国内でも値上げに踏み切り、スタンダード料金制は月1万2000ウォンから1万3500ウォン、プレミアムは月1万4500ウォンから1万7000ウォンに引き上げられた。ネットフリックス側は「コンテンツ投資を通じたサービス水準の維持」を理由に挙げていた。
◇コンテンツ投資拡大
業界や外国メディアでは、こうしたネットフリックスの相次ぐ値上げについて、コンテンツへの自信に基づく行動だという見方が出ている。
米紙ウォールストリート・ジャーナルは「値上げの背景には、ネットフリックスが加入者の生活にしっかりと定着し、値上げをしても購読が取り消されたりしないという確信がある」と分析する。実際、ネットフリックスは韓国で254億ウォンを投資して製作したオリジナルシリーズ「イカゲーム」の大成功により、株価は昨年11月17日に691.69ドルの史上最高値を記録した。
ネットフリックスが「第2のイカゲーム」を求めるためコンテンツ投資計画を拡充し、その負担を加入者に求めているということになる。投資銀行モルガン・スタンレーは、ネットフリックスが今年、昨年の25%増の170億ドル以上をコンテンツに投資すると見込んでいる。
◇韓国でネット回線使用料めぐり敗訴
ネットフリックスの料金引き上げ傾向を巡り、今後課される可能性が高まった「ネット回線使用料」の負担を、加入者に転嫁するのではないかという指摘も出ている。
同社は現在、韓国では通信大手のSKブロードバンドとネット回線使用料の支払いをめぐり激しく争っている。ネットフリックスは「オープン・コネクト・アプライアンス(OCA)」という独自のコンテンツ配信ネットワーク(CDN)を構築し、インターネットサービスプロバイダー(ISP)のコストを減らしていると強調し、ネット回線使用料を支払う必要はないと主張している。
しかし、ネットフリックスがSKブロードバンドを相手取って起こした債務不存在確認訴訟(相手に対して支払いの義務がないということの確認を求める裁判)で、ソウル中央地裁は昨年6月、原告敗訴を言い渡した。ネットフリックスは判決を不服として上訴し、現在、控訴審が進められている。
グローバルなコンテンツプロバイダー(CP)のネット回線使用料支払いに向けて、韓国国会・科学技術情報放送通信委員会のイ・ウォンウク(李元旭)委員長(共に民主党)が昨年11月に「電気通信事業法一部改正法律案」を発議するなど、国会や政府も制度づくりを急いでいる。
韓国だけではない。ドイツテレコム、ボーダフォンなど欧州各国の通信13社も昨年11月、共同声明書を通じて「米国のテック大手は欧州の通信ネットワークの開発費用を負担しなければならない」と主張し、ネット回線使用料の負担を促している。
通信業界の関係者は「現在、ネットフリックスに対してネット回線使用料を要求する機運が世界的に広がっている。これまで無料で使ってきたネット回線について、ネットフリックスが費用負担をしなければならなくなる可能性が高くなった」と分析する。「今回の料金引き上げは、ネット回線使用料の負担が生じる前の先制的な値上げとも考えられる」と指摘している。
©news1