2024 年 12月 28日 (土)
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インターネットゲーム中毒の治療に自宅で1日30分「電子薬」……韓国で活用方法研究

経頭蓋直流刺激(tDCS)を受ける女性と治療のフロー図=ソウル聖母病院(c)KOREA WAVE

「電子薬」とも言える「経頭蓋直流刺激(tDCS)」をインターネットゲーム中毒の治療に活用できるという研究結果が国際学術誌に発表された。

カトリック大学ソウル聖母病院精神健康医学科のキム・デジン教授の研究チームは、2018年から同病院中毒クリニックでインターネットゲーム中毒症状のある20代男性22人に経頭蓋直流刺激で治療する研究を進めてきた。

経頭蓋直流刺激は、皮膚表面(頭皮)に付着した電極から微細な直流電流を流し、脳の神経細胞を刺激して機能を調節する。優先的には刺激部位近くの神経細胞活動を調節するが、互いに連結されたネットワークを形成する神経細胞の特性を活用し、脳内部の神経回路まで影響を与えることができる。

今回の研究の参加者は、電気的刺激が伝わるように定められた方法と日程に従って、1日30分間、2週間、家で自己治療を実施した。

今回の研究で、治療群では対照群に比べて肯定的な結果が現れた。治療前後に撮影した機能的MRIで確認した映像では、治療群は前帯状皮質と背外側前頭葉皮質の間の連結性が増加し、このため自己調節能力が増加し、中毒対象に対する反応を抑制する肯定的な効果があることが確認された。

複数の研究によると、中毒障害は単に個人の意志不足や習慣の問題というよりは、前頭葉の機能が低下する一種の脳疾患だ。楽しい行為に対する動機付与を調節する補償体系の変化で渇望は増加するが、判断や計画、自己統制など認知機能調節能力は減少して「中毒の悪循環」に陥ることになる。適切な治療のためには中毒障害をうつ病と同じように「誰でも経験すること」と認識し、体系的に扱わなければならない。だが、社会的認識はまだ不足しているのが実情だ。

日常生活でよく接するため、その深刻性を認知しにくいが、技術の発達と多様なゲームの開発などにより、インターネットゲーム中毒患者は世界的に急激に増加している。米国精神医学会は2013年から、世界保健機関(WHO)は2019年から、ゲーム障害を中毒性障害に分類するなど、学界は過度なゲームの利用で発生する問題を最近の世界公衆保健における課題の一つと見ている。

現在、ゲーム中毒を治療するために承認された薬物はまだなく、研究チームは今回の研究が薬物治療以外の新たな治療法として体系的な管理が要求されるゲーム中毒患者に役立つと期待している。

脳領域機能的MRIによって視覚化された治療前後の脳(c)KOREA WAVE

経頭蓋直流刺激は非侵襲的であるだけでなく、スマートフォンと比べても約1/1000に過ぎない電流量(最大2mA)と電磁波(約0.001W/kg)で、人体への危険性と副作用の憂慮も大きくない。また、機器のサイズが小さく、作動方法も複雑ではなく、処方後は自宅で自己治療が可能だ。

研究チームの大田聖母病院精神健康医学科のチョン・ジョウン教授は「200個以上の先行研究を総合してみても、電極付着部位の痛みや熱感など一時的に不調になること以外には深刻な副作用はまだ報告されていない。自己適用が可能で薬物治療だけでは効果が少ない他の中毒患者にも代案になると期待される。今後、多様な中毒治療に適用できるよう研究中だ」と話した。

また、ソウル聖母病院精神健康医学科のキム・デジン教授は「最近、米FDAだけでなく韓国食品医薬品安全処でも治療用途として承認された電子薬が増加するにつれ、一般の関心も高まり処方事例も増加している。精神医学分野でも中毒、うつ病、不安障害など多様な疾患で有効性を立証しており、後続研究によって患者により安全で効果的な治療の可能性を提示できるよう努めている」と述べた。

今回の研究は、国際学術誌「Journal of behavioral Addictions/IF 7.8(2022))4月号」に掲載された。

(c)KOREA WAVE

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