「これで、『ご飯を食べに帰ってくる』と家族と交わした約束を、守ることができるね」
今年2月にオープンAIが公開した映像生成人工知能(AI)モデル「ソラ」の登場を受け、ある映像制作者の家族が語った言葉だという。
テキストさえ入力すれば最大1分の映像をサッと作り出す「ソラ」の登場は、映像制作業界を驚かせた。今後、技術がさらに発展すれば、AIが長編映画も作ると期待される。
これは映像制作の環境に一大変化をもたらすと予想され、バーチャルプロダクションの次のパラダイムになるという見方も出ている。
バーチャルプロダクションは、海外ロケや危険な奥地に行かなくても、スタジオの大型LEDウォールに実際に再現される背景映像を再生する撮影技法で業界に革新をもたらした。
韓国でバーチャルスタジオを運営する「VAコーポレーション」のオ・チャンウォン理事は「ソラについてのニュースを見た家族が、もうCG(コンピュータグラフィック)は必要ないのでは、と無邪気に尋ねた。ただ、今後、AIが作ったコンテンツを見て泣いて笑う日が来るかと思うと、非常に胸が痛い」と話した。
29日開かれたVAコーポレーションの一山(イルサン)スタジオ新規オープン記念式で、オ・チャンウォン氏は「技術発展という大勢の流れは止められない。私も制作現場で25年間働いてきた中で、LEDウォールのようなバーチャルプロダクションの手法に接し、すべての撮影セットや天気の心配をしなくても良いだろうと思った。ここですべてのパラダイムが大きく変わるだろう」と回想した。
今後、AI技術をどうコンテンツや業務に取り入れていくべきか哲学的に検討しなければならない。AIなど技術発展が映像制作環境に及ぼす影響は長所と短所がある。重要なことは人が開発・補完していけばさらに発展できる――オ・チャンウォン氏はこう展望した。
すでにAIツールは現場でさかんに使われている。最近公開された米動画配信大手ネットフリックス(Netflix)シリーズ「殺人者のパラドックス」でも生成型AI技術が使われた。主人公のおもちゃ(俳優ソン・ソック)の回想シーンで、ソン・ソックの幼いころの姿とそっくりのAI子役が登場する。実際、子役の顔にディープフェイク技術を加え、没入感を高めたと評価されている。
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