「歯ブラシが必要なお客様はフロントにお越しください。お値段は500ウォン(約55円)です」
ホテルの客室に入った宿泊客を喜ばせる要素の一つ、それはアメニティだ。歯ブラシ、歯磨きのような必需品はもちろん、簡単な化粧品まで使い捨て用に包装して「所有欲求」を刺激した。旅行に行く時、洗面用具を用意しなくてもいいので便利な用品だ。
しかし、3月29日から韓国で、使い捨てアメニティが歴史の中に消えた。「資源の節約とリサイクル促進に関する法律」(資源リサイクル法)が改正され、50室以上保有するホテルで使い捨て品を無料で提供できないようにする規制が施行されたためだ。
大規模ホテルは29日から使い捨てアメニティを無償で提供すれば、関連法令によって300万ウォン以下の過料を払わなければならない。ホテル業界は急いで「エコへの転換」に乗り出した。
規制を前に訪れたソウル市永登浦区(ヨンドゥンポグ)のコートヤード・マリオット・ソウルタイムズスクエア。14階にあるデラックスルームに入ると、右側には明るい照明の浴室があった。洗面台の片側には長い案内文が書かれた小さなパネルが置かれていた。
案内文には「資源リサイクル法により50客室以上保有するホテルは使い捨て個人衛生用品を無償提供できません。かみそりと歯ブラシや歯磨きをフロントで有償販売しているので参考にして下さい。環境保護に参加していただき、感謝しています」と書かれている。
案内文が置かれた場所は元々歯ブラシ、歯磨きカミソリなどアメニティが揃っていたところだ。ホテルは規制が始まる前から案内文を設置し、29日からはすべての客室からアメニティを置かないようにした。ホテル側は5階にあるフロントで、500ウォン程度で使い捨て用品を販売している。
コートヤード関係者は「一部で不便を感じる顧客がいると予想される。多様なイベントを開き、顧客に環境にやさしいエコ製品を提供するなどの方法で奨励する」と話した。
使い捨てシャンプーも無償で提供できないホテルは、シャワーブースに大容量ディスペンサーを設置した。コートヤードマリオットソウルタイムズスクエアも客室のシャワーブースにシャンプーとコンディショナー、シャワージェルを入れたディスペンサーを壁に取り付けた。ホテルは昨年、すべての客室にディスペンサーの設置を終えた。
より積極的にESG(環境・社会・支配構造)活動を展開するホテルは、客室からペットボトルもなくした。コートヤード・マリオット・ソウルタイムズスクエアもその一つだ。
コートヤード・マリオット・ソウルタイムズスクエアは、283室の全ての客室に浄水器を設置した。製品はコーウェイの「ナノ直水」ミニ浄水器で、客室の備品とともにバーテーブルに設置された。電気供給が必要ない無電源製品だ。
ただ、外国人宿泊客はまだ客室浄水器に慣れていないため、使用率はやや落ちている。各階に1台ずつ浄水器を設置したホテルは多かったが、全客室に浄水器を置いたのは異例のことだ。ホテル側は、浄水器の使用を促すための案内文を作って機器に貼り付ける。
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