韓国の冬の風物詩の一つである「たい焼き」。今年も既に立春を過ぎ、たい焼きの旬も終わりかと思われたが、最近ソウルではロボットが作るたい焼きが人気を集めている。
ソウルのおしゃれエリア聖水洞(ソンスドン)にある「現代たい焼き」を訪ねると、店主のユン・クムシク氏が新製品のクリームあんを作っていた。
ユン氏は昨年12月末、親が運営する木工所の倉庫だった1坪ほどの空間に店を開いた。
店で真っ先に目に入るのは、ほかならぬロボットだ。ハンファのロボット専門企業「ハンファロボティクス」のロボット「HCR」が、キッチンの真ん中でたい焼きを焼いている。たい焼きを食べに訪れた客の大半は、見慣れぬ光景に目を離すことができない。
開発者出身のユン氏は、数年前、業界のコミュニティーを見て回ったとき、たい焼きに関心を持つようになった。彼は「維持、補修に大きな困難はないと思い、装備導入を決心した」と話した。
たい焼きロボットは、基本的に鉄板が回りながら作動する。たい焼きの型に生地とあんを入れる自動噴出口と、完成したたい焼きを取り出して運ぶロボットで構成されている。人は足りない材料を足すだけでいい。
ユン氏は「ロボットを導入し、大きく2つの効果を得た」と言う。第1は、当然ながら人手を減らすことができるという点だ。ユン氏と母親はそれぞれ材料準備と計算を担当していた。焼くのに注意力が分散されず、お客さんが集まっても素早い対応が可能だった。
第2は話の種になるという点だ。ユン氏は「おいしいからといってすべての飲食店がうまくいくわけではないようだ。商圏に加え、面白いストーリーがあればさらに多くの人が訪ねてくれる」と話した。
導入過程では悩みも多かった。場所が狭く、冷蔵庫は頭の上に上げなければならなかった。当初、設備として考えていたアクリル遮蔽(しゃへい)幕も撤去した。ユン氏は「機械から出てきたたい焼きをすぐに袋に入れず、まず器に投下するように変更した。熱いたい焼きをすぐに包装すると、湿ってしまうからだ」と説明した。
狭い空間でロボットの作動による危険はなかったのだろうか。ユン氏は「ロボット自体、衝撃を感知すると自動停止するので安全だ。機械操作部にも安全スイッチがあるので誤作動したら緊急停止させることもできる」と語った。ハンファロボティクスの「HCR」は、人が一定の範囲内に入ると速度を落としたり動作を止めたりする。
ハンファロボティクスは、昨年10月に正式に発足した。既存の産業用ロボットの他にもサービス用アプリケーションの製品群を拡大している。
ユン氏は、この冬の寒さが長く続くことを願っていた。数千万ウォンに達した設備投資費を数カ月以内に回収することができるという期待混じりの展望も示した。
ユン氏は「数多くの露店のたい焼き店が消えていく中で、多くの方々に安くておいしいたい焼きを提供したい」と、素朴な夢を語った。
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