Startup Story ~~ 成功のカギ
テンロコ ユン・ジョンチョン代表
YouTubeとOTTを通じて、韓流が拡散している。グローバルの拠点として欠かせないのが、ブラジルやアルゼンチンなどの中南米諸国。だが、言葉の壁や流通インフラの不足などで、米国やアジア諸国に比べてはそれほど注目されなかった。
「テンロコ」とはスペイン語で「10の狂ったこと」を意味する。韓流の「ブルーオーシャン」(競争相手のいない未開拓市場)である中南米市場を代表するプラットフォームになるのが目標だ。
「Kポップファンクラブのイベント代行を始め、Kドラマ、Kフードに領域を広げ、中南米の韓流市場を攻略する計画」
テンロコのユン・ジョンチョン代表はこんな野心を掲げる。
ユン代表にとって同社は4度目の起業だ。
初の起業は2018年。韓国の化粧品を米国やメキシコのアマゾンで販売する事業を手掛けた。その後、医薬品の配達フラットフォーム開発に挑戦したが、規制の壁にぶつかり、挫折した。
3度目は2020年11月に発売した外国人向け医療サービス「メディックトーク」。これは外国人が薬局を訪れる際、症状をイメージ化したピクトグラムによって薬剤師に簡単に説明できるようにしたプログラムだ。
「メディックトーク」事業の進めるうち、偶然、Kポップファンクラブによるクラウドファンディング市場を見つけた。昨年2月、メキシコ出身の職員から男性アイドルグループ「Stray Kids」のメンバー、アイエンの誕生日祝いの地下鉄広告を調べてほしいと頼まれ、広告費の募金を3日で600ドルを集めるのに成功した。その後、ユン代表は翌月、「Stray Kids」のヒョンジン、BTSのシュガ、5月にBIGBANGのテソンとテヤンのファンクラブ広告イベントを開いたあと、最終的にピボット(事業転換)を決めた。
テンロコは11月までに計12件のファンクラブ広告イベントを手掛けた。主な依頼者は中南米のファンクラブという。
広告イベントは、ソウルの弘大(ホンデ)入口駅、合井(ハプチョン))駅、建大(コンデ)入口駅と明洞(ミョンドン)の屋外広告などを主な拠点とする。
ファンクラブの依頼を受けて地下鉄駅の広告を企画すれば、ファンクラブがファンディングし、テンロコはその資金を使って実際に事業を進め、現地の写真をファンクラブと共有する方式だ。「Kポップファンクラブに配信した広告の写真はTwitterで多く共有されています。100万件以上がリツイートされたケースもありますよ」。ユン代表は胸を張る。
ユン代表は、ファンクラブ広告イベントによって、中南米に韓流の需要があることを確認し、コンテンツ制作能力を備えたコマース企業への事業拡大に備えるようになった。
「中南米はKポップファンが多いが、配送料が高くてグッズ購買も容易ではありません。大量購買を代行し、それを通じて物流費用を下げる。一方で、中南米におけるKポップのビッグデータを得て、新規事業を推進する計画です」
新型コロナウイルス感染が落ち着けば、K-POPファンがまた韓国に戻ってくる。それに備えて今年2月ごろ「K-POPクエスト」アプリを公開する予定だ。進行中のファンクラブ広告イベントの現場や多様なKポップ聖地を、外国人観光客が訪問できるよう情報を提供するものだ。コンテンツ制作には、ドラマ・映画に登場する食べ物、観光地など、さまざまな韓国の姿が盛り込まれる予定。消費力のある中南米の中年層を攻略しようという戦略がある。
テンロコはこのような事業が認められ、昨年4月にソウル市江南(カンナム)区の青年創業支援センターの支援企業に選ばれた。これに先立ち、文化体育観光省の初期観光ベンチャー企業などにも選ばれている。
「中南米の10~20代の韓流ファンは消費力が高くありません。現地の韓流ブームをさらに広めるためには中年層に突き刺さるコンテンツを作る必要があります。中南米市場を調査すれば、ドラマのロケ地を訪問したり、劇で登場した屋台料理を買ったりしたいという意見も多くありました。年末までにKフードコンテンツを8本、ポルトガル語とスペイン語でつくり、家庭料理を現地で販売する方法で事業を拡大したいと思います」
ユン代表は次を見据えている。
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