メタバースは時空間制約を超越するという点で、産業界での活用度が高い。管理上の効率性が高いうえ、コスト削減効果も大きい。メタバースへの注目度は高まるばかりだ。
韓国「メタバースイノベーション大賞」審査委員会は、2023年の4回目の候補作として▽デクスタースタジオ「D1」▽マニアマインド「VR手術シミュレーター」▽メタビュー「MetaVu-GIS」を選定した。
主人公が乗った自動車が東湖(トンホ)大橋を走る。窓の外には、狎鴎亭(アプクジョン)駅から玉水(オクス)駅に向かう地下鉄3号線が通る。車のフロントガラスには、東湖大橋のオレンジ色の橋脚が夕日とともに映えている。ただ、これは実際の東湖大橋ではない。VFX(視覚特殊効果)専門業者デクスタースタジオのバーチャルプロダクションスタジオ「D1」で、撮影された場面だ。
2021年、京畿道坡州市(キョンギド・パジュシ)にオープンしたD1は、大型LED(発光ダイオード)の壁にリアルタイムで3D(3次元)映像を映し出し、俳優と背景を同時に撮影するスタジオだ。従来、室内でこのような場面を撮影するためには、ブルースクリーンの前で自動車を撮影して、CG(コンピュータグラフィックス)を背景にかぶせる作業が必要だった。D1では、希望する場所を直接映し出して撮影することができ、工程時間、費用とも削減が可能だ。
D1の最初の作品は、最近公開された映画「ザ・ムーン」だ。リアルな宇宙体験ができるという高い評価を受けた。D1は、グローバル・バーチャル・プロダクション・ソリューション専門企業のラックス・マキナと国内で初めて手を組んだ。映画装備メーカーのアリ(ARRI)、アンリアルエンジン開発会社のエピックゲームズなどとも提携した。
モバイルゲーム会社としてスタートしたマニアマインドは、VR(仮想現実)を活用したヘルスケアスタートアップへと進化した。2017年に設立した子会社のサージカルマインドは、現実と仮想空間の動きを一致させた高精度整合技術で、国内初のVRをベースにした手術シミュレーターを作った。現在、現場の外科医は十分な外科手術経験を積むのが難しいため、VRシミュレーターを使って手術熟練度を高めるのが狙いだ。
白内障の手術トレーニングでは、顕微鏡のような形をしたVR機器を使い、実際の手術器具で眼球模型を手術する仕組みだ。顕微鏡の高い精度をVRで実現し、映画モーションキャプチャーに使われるオプティカルトラッキングシステムを活用して、利用者の動きを0.5㎜誤差内に追跡する。角膜を撮影する際は、実物により近づけるために眼球模型はシリコンで製作した。
美容整形医療機関を対象にボツリヌストキシン(ボトックス)、フィラー注射施術訓練シミュレーターも開発した。国内での専攻課程では美容整形教育課程が不足しており、皮膚の下に見えない部分を施術するという点で、シミュレーターによるトレーニングに関心が集まる。実際、人の肌と似た顔のモデルに注射する際、注射位置と深さを正確に測定できるのが特徴だ。
産業用メタバース専門企業メタビューのMetaVu-GISは、目で見ることが難しい地中の地下施設物をXR(拡張現実)として可視化し、管理できるようにしている。タブレットやマイクロソフト(MS)「ホロレンズ」で特定空間の施設情報を簡単に確認できる。傾斜の多い韓国の地形を反映し、深さと傾きまで3Dで具体化している。
遠隔地での作業者と、映像・音声・文字で対話し、IoT(モノのインターネット)センサーを連動させて問題発生時にリアルタイムで感知・対処することができる。メタビューは、慶尚南道統営市茂田洞(キョンサンナムド・トンヨンシ・ムジョンドン)一帯の上下水道、電気、通信、ガスなど地下施設5種を構築した。毎回掘削工事を経なくても施設物を統合管理することで、時間・費用を節減できる。
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