ガラス張りで日差しが差し込む快適な社屋「プロップテックタワー」前。ロビーに入ると、先に出勤した同僚の後ろ姿が見える。「早く出てきたね」「うん、今日の会議は10時だよね? 会議室を予約しておかないと」。エレベーターで移動する。
「おはようございます」。午前中に会議がある日だからだろうか。早く出勤して座っている職員が多い。「机を少し片付けたので、これから業務を始めようか」。ところが、事務室から出ないでぼんやりしているキム課長がいる。昨晩からずっとそうしていたのか。
一見、普通の会社の日常のようだが、違う点がある。すべての空間が仮想だということだ。簡単な準備を終え、パソコンの電源を入れて「ソーマ(soma)」に接続すれば、すぐプロップタワーテック前の道路に着く。総合プロップテック「ジクバン」社員の説明をもとに再構成した「1年目を迎える出勤風景」だ。
◇個人の机も、何をしているかも――わかる
プロップテックとは――Property(土地・建物)とTechnology(技術)をあわせた造語で、不動産分野における情報技術(IT)やIoT技術の総称だ。テクノロジーによって、不動産業界の課題、古い商習慣を変革しようという価値や仕組みを意味する。
「プロップテックタワー」の中には、各階に各部署の事務室があり、個人の机も決まっている。誰が出勤したのか、他のことをしているのかもわかる。キーボードチャットではなく、直接話したり聞いたりすることもできる。「現実の私」は、各自の空間にあるが、「ソーマの中の私」は、一つの空間にあることを常に実感する。
新型コロナウイルスの感染拡大時、多くの会社が実施した在宅勤務とは違う仮想・拡張現実での通勤風景だ。
◇本社を仮想空間に「移転」
ジクバンは、2021年2月から急きょ、リモートワーク体制に入った。だが、それまでのオフィスでの勤務に代替させるのに限界を感じたという。出勤先がなく、同僚と直接の対話がないまま業務を分配していると、連帯感や所属意識が薄くなる。
そこで、同年7月、仮想オフィス「メタポリス(Metapolis)」を設立し、オフラインのオフィスをなくし、本社を仮想空間の中に移したのだ。1年間運営し、職員のフィードバックを反映してアップグレードしたソーマを誕生させたのだ。
パンデミック期間中に在宅ツールとして人気を集めた企業「ズーム(zoom)」さえ「ウィズコロナ」以降、職員をオフラインに呼び出したが、ジブバンは違った。
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