「ショートフォーム」(短い動画)の全盛時代だ。TikTokが1分以内の短い動画サービスで空前のヒットを記録すると、ユーチューブが「ショーツ」を出した。インスタグラムは「Realth」というサービスで対抗した。現代人の平均集中力持続時間が10分以内になったという研究結果も出ている。短くて刺激的な映像だけが、現代人に快楽を与えている。
ランダムに続く映像の視聴時間が3~4時間を軽く超えることもある。プラットフォーム企業はショートフォームを導入するのが利用者のアクセス時間を増やす最も手軽な戦略だと考えている。誰もがショートフォームコンテンツを強化する理由だ。
その一方で、ショートフォームの視聴を規制しようとする動きが世界中で続いている。ショートフォームの元祖TikTokは、18歳未満の利用時間を1日1時間に制限した。中国では14歳以下は1日40分だけにした。米モンタナ州は禁止法案を可決した。なぜだろうか。
最近、韓国内でも精神科医が短い映像に取り囲まれた環境を憂慮している。ショートフォームを「デジタル麻薬」に例えることもある。
「あなたもゆっくり年を取ることができます」の著者であるソウル峨山病院のチョン・ヒウォン教授は、短い映像が私たちの脳を破壊し、老化を促進すると警告する。
ショートフォームは、情報技術(IT)の専門家が人間のドーパミンを最大限引き出すように研究した結果だ。技術者だけでなく心理学者までも研究開発(R&D)に参加した。まるで食品会社が甘み、塩味を極大化して中毒性の強い食品を開発するかのようだ。
チョン教授はあるユーチューブチャンネルに出演して「ショートフォームは、人がより早く、より多くのドーパミンを得られるという点で、合成麻薬と似ている」と話した。
ショートフォームは、米国のカジノで一番多く出るスロットマシンのよう。次に何が出てくるかわからず、ランダムで面白い映像を見続けることになる――と警告している。
◇「ポップコーン脳」
合成麻薬であるフェンタニルの注射を一度受けると、ドーパミンのシステムが壊れ、回復に数十年かかるとされている。強い刺激に慣れてしまえば、自然な刺激は、もはや感じ取ることができないほど、微々たるものになってしまうからだ。麻薬やアルコールの中毒になると、日常生活は白黒のように感じられるという。ショートフォームが脳をそのようにしてしまうのだ。
そしてこれは「ポップコーン脳」現象と言われる。脳がスマートフォンなどデジタル機器の速くて強烈な刺激に慣れて、現実の遅くて弱い刺激に無感覚になる現象を指す。すなわち、ポップコーンが跳ね上がるように即物的な現象にだけ反応するということだ。
脳は左脳と右脳が同時に発達しなければならない。脳を発達させるためには味覚、嗅覚、触覚など五感を十分に使いながら脳を刺激することが重要だ。しかし、ショートフォームに慣れたわれわれの脳は、止まった状態と同じになる。
脳波を測定してみると、スマートフォン中毒になった時、前頭葉の活性度が著しく落ちることが確認できる。
前頭葉は記憶力、思考力、感情調節などを担当する。映像中毒になれば集中力が落ち、感情と衝動をコントロールしにくくなるわけだ。
成人ではすでに生成された機能が落ちても再び回復するというが、満0歳~10歳の成長期には危険かもしれない。
精神科医のパク・ソヒ氏は、ユーチューブチャンネルで「生まれた時、成人よりはるかに多くの神経網があるが、成長する間に使わない部分は枝打ちされてしまう。前頭葉を幼いに使わなければ、成長の過程で枝打ちされてしまい、後で使う必要がある時に機能しない」と注意を促す。
コンテンツを見ること自体が悪いわけではない。ただ、考えずに視聴するショートフォームに浪費する時間は減らさなければならないのだ。専門家は、ショートフォームを見ない方が良いと言うが、それができないのであれば時間を決めておくしかない。
健康な生活を送りたいなら、脳にさまざまな刺激を与えなければならない。本を読みながら考え、旅行に出て、新たなものを見ることが、人生を豊かにする。おいしい食べ物を探し回るのもいい方法だ。【news1 ソン・オムジ記者】
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