「町のクリーニング店だからといって“モバイル”“非対面”をできない理由はない。洗濯一筋でやってきたから品質には自信がある。それで勝負したい」
こう語気を強めるのは、ソウル市恩平(ウンピョン)区の路地で20年間クリーニングを手掛ける「クリーン洗濯」のト・ヒョンスク代表だ。最近世に送り出したのが「洗濯王」というアプリ。「モバイル」「非対面回収・配送」で市場を拡張するクリーニングサービスアプリ「洗濯特攻隊」や「Laundrygo」など、スタートアップ企業と正面から競うものだ。
洗濯スタートアップが市場を拡大する状況に、これまでの町のクリーニング屋が反旗を翻したわけだ。恩平区の「クリーン洗濯」や、大田(テジョン)の「ワンクリーン洗濯所」、天安(チョナン)の「洗濯台帳」などを拠点にして、モバイルアプリで注文を受け、スタートアップと同様、非対面で回収・配送するのだ。
「クリーン洗濯」は2002年に開業し、一時、売上は月額1000万ウォン以上を記録、安定成長してきた。ところが大型フランチャイズクリーニング店に加え、モバイルを中心とするスタートアップが参入し、この4、5年で売上が急減した。
なすすべもなく、「クリーン洗濯」は2018年、あるモバイル洗濯仲介フラットフォームに加入する。顧客から注文を受ければ、近くのクリーニング屋が回収・配送に出向く仕組みだ。単身・共働き世帯の生き方に合わせたり、非対面サービスを可能にしたりした。
「手数料があったが、売上は2倍に増えた。新型コロナウイルス感染拡大により、モバイルを利用する顧客はさらに増えた」(ト代表)という。しかし、このフラットフォームが昨年初め、経営難で廃業し、売上は再び落ちることに。「じっとしていられず、アプリを直接開発することにした」。こうして作られたのが「洗濯王」だった。
洗濯王はソウル市の西北部を拠点とするが、全国どこでも利用できる。ソウル市の恩平や麻浦、西大門の各区と高陽をト代表と夫が走り、収集・配送する。その他の地域は宅配便を利用する。したがって、最近の洗濯スタートアップのように「早朝配送」「当日配送」は難しい。だが、ト代表は「問題にならない」とみる。「ほとんどの客は配送が少し遅れても、大切な服を傷つけることなく洗濯することを望んでいる」からだ。
「洗濯王」を出してから6カ月、「クリーン洗濯」の売上は月平均800万ウォンから1600万ウォンに倍増した。増えた注文のうち20~30%程度が釜山(プサン)や光州(クァンジュ)などから宅配で送られたものだ。「人工知能(AI)によって運営されている大型洗濯工場では見逃されているような、洗濯の品質に集中しているので、消費者の関心も高まっている」。ト代表はこう胸を張った。
他の零細クリーニング店にも「洗濯王」に参加してもらうことが今年の目標だそうだ。「洗濯王」の拠点クリーニング店を全国に拡大し、零細店にも販路拡大の機会を与えたいという。
「数十年間、洗濯ばかりしてきたクリーニング屋の社長さんが、一瞬にして崩れるようなことのないようにしたい。力の及ぶ限り、サービスを拡張して町のクリーニング屋を助けたい」
これがト代表の今のやりがいだ。
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