Startup Story ~~ 成功のカギ
MERAKER キム・ソングォン代表
人工知能(AI)カメラセンサーが搭載されたスマートフォンで、気に入ったカフェを、自分の席から360度回転しながら撮る。数分後、この動画がメタバースのフラットフォームで、実際のカフェと似た仮想の立体カフェが作られていく。そこに、仮想人間の友人たちを招待し、コーヒーを飲みながら会話を交わす――近未来、見ることになる場面の一つだ。
政府出捐研究機関のある科学者が、こんな演出を可能とするAIセンサーでもって創業し、関心を集めた。AIセンサーは、メタバース内のコンテンツを手軽に制作することができるフラットフォーム技術の一つ。昨年11月23日、法人を設立して1カ月もたたない10億ウォン代の投資を誘致するほどホットなのだ。韓国電気研究院(KERI)の技術に基づいてスピンオフした「Meraker」がまさにそこを指す。
創業者のキム・ソングォン氏は、サムスン電子総合技術院やKERI電気医療機器研究センターで10年余り、AIの映像分析技術を開発した人物。主力分野は、AIに基づくアルゴリズムとカメラのセンサー技術を結び付けたAIセンサーだ。
「メタバースは現実と仮想世界(VR)のつながりを作るものですが、それは結局、AIセンサー技術にかかっています。センサーは現実にある物理情報をデジタル情報に変える役割ですが、センサーにAIを搭載し、メタバースにふさわしい情報を提供することを目指しています。メタバースにある種、カスタマイズされたAIセンサーといえます」
「Meraker」のAIセンサーは、既存のセンサーと何が異なるのか。ここでキム代表が挙げるのは、データ収集の効率性だ。
「通常のセンサーは、通信の帯域幅などを考慮して、大きな信号だけを選んで、小さいものは捨てるという状況で作動しています。サーバーに伝達される際には既に、収集したデータの多くが捨てられた状態なのです。センサーにAIをつければ、目的に合う有意義なデータをより正確にふるいかけて伝達します。私たちの生活周辺にあるすべての物事や環境を、メタバースイメージで生産する時、それに必要な情報だけを選別して伝達する。これが最も大切な技術だと言えますね」
メタバースには時空間の制約がない。その拡張性や、現実の世界に類似しているという現実感、未来の視聴者であるMZ世代利用者のアクセシビリティ(近づきやすさ)――など、メタバースのフラットフォームには長所がある。それが有形無形の知的財産権を持つ事業者の参加を導く。「Meraker」の技術は、コンテンツ・フラットフォームを構築する際、時空間の費用を削減するという観点で魅力的だ。
メタバースの代表的な企業「Wysiwyg Studios」が直ちに「Meraker」にラブコールを送り、両社は昨年12月20日に10億ウォンの投資協約を締結した。「Wysiwyg Studios」は特殊映像の制作会社で、米動画配信大手ネットフリックス(Netflix)を通して公開されたSF映画「スペース・スウィーパーズ」のコンピューターグラフィック・視覚特殊効果を担い、「ムーラン」「魔女」など韓国内外の大規模プロジェクトを受注している。
最近は買収・合併、戦略的パートナーシップ協定などを繰り返して、VRとAR(拡張現実)などメタバース分野での事業を拡張している。「Wysiwyg Studios」のパク・グァヌ代表は、協約の際、「Wysiwygが進めるメタバース事業のパートナー企業として大きな相乗効果を期待する」と述べた。
キム代表は最近、AIセンサーを応用した初めての製品を出した。携帯型眼底カメラだ。白内障、緑内障、黄斑変性症、糖尿病網膜症など、失明を誘発する4大眼科疾患を選別して診断できるものだ。既存の眼底カメラは、眼球の後部にある緑内障、糖尿病網膜症、黄斑変性などの網膜疾患のみ診断できた。
ところが「Meraker」の眼底カメラは、眼球の前部にある白内障、ドライアイ、老眼の診断も可能だ。国家科学技術研究会の「遠隔医療・救急のための先端人工知能センサー技術」融合クラスター事業を通して、創業前の2年間、研究・開発に取り組んだ。
キム代表は「外部サーバーと接続しなくても、カメラセンサーでAIが操作する携帯型眼底カメラは世界で初めてです。AIセンサーが眼球の前と後ろを正確に区別し、自ら病気を診断して、高品質の医療データを取得できます」と説明している。
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