「夢の電池」と呼ばれる全固体電池の試作品生産が年内に韓国で始まる。電気自動車(EV)市場の勢力図を変える「ゲームチェンジャー」と見る向きもあるが、商用化に至るまで越えるべき山が多く、市場を揺さぶるには力不足だという評価が出ている。
全固体電池はリチウムイオン電池の電解液を固体で作ったバッテリーだ。バッテリー火災の主な原因である外部衝撃による漏水発生の可能性が低い。従来よりエネルギー密度が高く、充電時間の短縮、走行距離の伸張などが可能だ。サムスンSDIのチェ・ユンホ社長が先月29日、会社創立53周年記念式で下半期に試作品生産に乗り出すと明らかにして関心を引いた。
全固体電池の技術力が最も進んだのは日本だ。村田製作所など一部の素材メーカーが小型全固体電池をすでに生産している。EV用の中・大型全固体電池の開発も日本が一歩リードしている。トヨタが代表的だ。2027年までに全固体電池を搭載したEVを発売すると宣言し、昨年世界で初めて試作品を公開した。
韓国は日本を僅差で追いかける。LGエネルギーソリューションは2026~27年に高分子系、2030年に硫化物系の全固体電池の量産がそれぞれ可能だと見る。サムスンSDIは2027年の量産を目標に京畿道(キョンギド)水原(スウォン)研究所に全固体専用パイロット「Sライン」の構築を完了し、サンプル製作を完了した。
SKオンも2028年の商用化を目標に、国内外の技術者らと研究開発に邁進する。中国の全固体電池開発はまだ始まったばかりだという。
このため、一部には全固体電池が「中国を追い抜く新技術である」と同時に「日本に完全に主導権を取られる」という両面の反応がある。
ただ業界では、サムスンSDIをはじめ全固体電池の試作品の生産が拡大し、EV搭載への動きは本格化するものの、大きな期待につながるような急変はないという見方が支配的だ。
普及にはさまざまなハードルが残っているからだ。最大の難関は原価だ。全固体電池はこれまで開発だけに焦点が合わされ、生産単価が非常に高い。商用化が進んでも価格競争力を備えるまでに相当な時間がかかる。
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