ユン・ソンニョル(尹錫悦)氏が韓国大統領選で打ち上げた公約「女性家族省廃止」は、既に忘れられつつある。国会での議論が事実上、開店休業状態であるためだ。
女性家族省を保健福祉省傘下の「本部」に格下げする政府案とは別に、保健福祉省を分割して「社会福祉省」「両性平等福祉省」「保健省」とする案も浮上し、与野党の指導部間で一時議論された。
だが、不発に終わった。
与党「国民の力」のユン・ジェオク(尹在玉)と、野党「共に民主党」のパク・グァンオン(朴洸瑥)の両党の院内代表は先月、院内指導部に選出されて以来、現在まで女性家族省廃止について一度も議論したことがないようだ。
「国民の力」のチャン・ドンヒョク(張東赫)、民主党のホン・ソングック(洪性国)の両党の院内報道官も「まだ女性家族省廃止に対する議論は始まっていない」と、一致した見解を示している。
◇与野党3+3政策協議体
女性家族省廃止問題が与野党間で扱われたのは今年2月、当時の国民の力のチュ・ホヨン(朱豪英)院内代表と民主党のパク・ホングン(朴洪根)院内代表の時が最後だ。
当初の政府案は、ユン大統領の公約通り、女性家族省を廃止し、労働関連部分は雇用労働省に移し、両性平等と人口・家族・児童・青少年などの機能は保健福祉省傘下の「人口家族両性平等本部」に移管するという内容だった。
国民の力は昨年10月、政府組織改編所管省庁である行政安全省と協議し、こうした政府組織法改正案を発議した。
同年12月1日以降、女性家族省廃止と在外同胞庁新設、国家報勲処の省への昇格などの内容が盛り込まれた政府組織法案に対する与野党間の議論が本格化する。チュ・ホヨン、パク・ホングン両氏を含む「与野党3+3政策協議体」が動き出したのだ。
与野党の交渉過程に詳しい国会関係者によると、交渉が膠着状態になると、国民の力院内指導部が民主党に対し、保健福祉省を二つの省庁に分離する修正案を提案した。
民主党は、国民の力の修正案に原則的に同意した。女性家族省を本部に格下げすることには反対したが、「地位は維持する」という提案であったため修正案には反対しなかった。
◇新組織の名称を巡る意見の違い
問題は女性政策などを担当する新組織の名前だった。
野党「共に民主党」は、新組織の名前に必ず「性平等」という単語を入れるべきだと主張したが、与党「国民の力」はこれに難色を示した。女性家族省廃止という公約の趣旨に反してしまうからだ。
結局、新組織の名称を巡る意見の違いを埋めることはできず、交渉は決裂した。政府組織法改正案は、「女性家族省廃止」の部分だけを除いた形で今年2月、国会本会議を通過した。
民主党側の関係者は「新組織の名称に『女性』はなくても『両性平等』の意味を込めた単語は不可欠だと主張した。だが国民の力は受け入れず、交渉は決裂した」と振り返る。
女性家族省の関係者は「保健福祉省に人口家族両性平等本部を新設し、そこで女性家族政策を独立的かつ強力に推進するというのが女性家族省の立場だ」と明らかにした。
大統領室の主要関係者も「政府が出した原案で立場の変化は全くない」と強調している。
国民の力と民主党の新たな院内指導部が果たして、女性家族省廃止についての議論に踏み出すのか。現状では見通せない。
(おわり)
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