韓国型発射体ヌリ号(KSLVⅡ)の3回目の打ち上げには、防衛機器製造・販売「ハンファエアロスペース」が初めて参加した。
ハンファは国内宇宙発射体産業生態系を導く準備と、宇宙・衛星事業を網羅するバリューチェーン構築に専念して、韓国版「ニュー・スペース(New Space)」(民間企業による宇宙ビジネスのイノベーション)に近づいている。
ハンファエアロスペースは、ヌリ号3号機の製作と組み立て、構成品製作企業に対する総括管理を韓国航空宇宙研究院とともに担っている。韓国政府の「ヌリ号高度化事業」の一環として、技術移転を受ける総合企業に選定されたためだ。
◇企業に技術移転
ヌリ号高度化事業は、米航空宇宙局(NASA)が米航空宇宙メーカー「スペースX」に技術移転したように、民間主導型の「韓国型スペースX」を立ち上げる事業だ。
ハンファエアロスペースは、韓国航空宇宙研究院が保有する発射運用・管制などのノウハウを受け取り、韓国の宇宙発射体産業を成長させる。
3回目の打ち上げは「官民合同」での取り組みだった。だが、2027年までに予定される3回のヌリ号の追加打ち上げでは、ハンファが製作そのものを主導する。
ハンファは宇宙発射体の組立場の設立地として、羅老宇宙センター近くの全羅南道(チョルラナムド)順天(スンチョン)を選定し、ヌリ号の追加生産に向けた準備を進めている。
ハンファは、ヌリ号に次ぐ次世代発射体(KSLV-III)技術の移転を受ける企業候補にも取り上げられている。
次世代発射体は3段型ヌリ号より3倍以上高い性能を持つ「2段型発射体」で、2032年に韓国初の月面着陸船を搭載する予定だ。
技術移転を受ける企業は事実上、韓国の「スペースX」に浮上することになる。ハンファが有力候補で、同研究院とともに2027年以後、次世代発射体開発と量産に取り組む可能性が高い。
◇副会長肝いり
ハンファグループで宇宙計画の先頭に立ち、同社の成長速度を高めているのが、キム・ドングァン副会長だ。
ハンファは2021年、キム副会長が率いる航空宇宙事業専門組織である「スペースハブ(Space Hub)」を発足させ、全社的に宇宙産業に参入していく。今年3月にはハンファエアロスペースが、ハンファ・ディフェンスに続き、ハンファ防衛産業まで合併した。
スペースハブは、韓国科学技術院(KAIST)と共同で設立した宇宙研究センターに、100億ウォン(約10億円)を投入した。民間企業が大学とともに立ち上げた宇宙分野研究センターとしては、韓国で最大規模だ。
さらに、ハンファシステムを通じて衛星事業にも参加している。
同社は2020年、英衛星通信アンテナ企業「ペイザー(Phasor)」(現ハンファペイザー)を買収し、米衛星通信アンテナ開発「カイメタ(Kymeta)」に持分投資した。2021年には、世界初の宇宙インターネットの米ベンチャー企業「ワンウェブ(OneWeb)」の持分(8.8%)を確保するなど、宇宙通信サービス事業に領域を拡大した。
◇宇宙産業トータルソリューションプロバイダ
衛星を活用したサービス産業にも注目する。
韓国の衛星システム企業「セトレックアイ(Satrec Initiative)」を買収し、宇宙産業バリューチェーンを広げた。セトレックアイは世界最高解像度の商用地球観測衛星「スペースアイ・ティー(Space Eye-T)」の開発に乗り出した。
打ち上げ目標時期は2024年で、ハンファのスペースハブと積極的に協力する計画だ。「衛星製作→発射輸送→衛星サービス」につながるバリューチェーンを構築し、今後は宇宙探査技術まで確保して国内初の「宇宙産業トータルソリューションプロバイダ」に成長するという狙いがある。
ハンファエアロスペース関係者は「ヌリ号の追加発射は、まだ成功を確信できる事業とは言えないが、韓国航空宇宙研究院が蓄積した能力と国内300社余りの技術、ハンファの宇宙事業に対する情熱で成功させ、韓国の宇宙産業を一段階、跳躍させる」と意気込んでいる。
(つづく)
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