歌手イ・ヘインさん(活動名バーバラ、35)は、まだ体重に対する強迫観念から抜け出せずにいる。
摂食障害を治療しながら「増えた体重が耐え難い」とも嘆く。
食欲抑制剤はやめたが、ダイエット漢方薬を今年2月まで飲み続けた。ヘインさんは今も「食欲抑制剤を飲みたい」という欲求が生じる時があるという。
クァク・イェインさん(28)はアイドル練習生を辞めて10年になる。
イェインさんも依然、体に対する強迫観念を持って生きているという。「“太ったら失敗だ”という考えを消すのは難しい。今も容貌評価から自由ではない」
容貌に対する評価から抜け出してみよう――と坊主頭にしても、周囲はイェインさんに「頭の形がきれいだ」という評価をした。やはり評価から抜け出すことはできないと思った。
◇さらに基準が厳しく
ヘインさんは今、ボーカルトレーナーとして10代を指導している。自分が経験したことを、今の青少年たちも繰り返しているとみる。
「私が毎回、『ご飯は食べた?』と聞いても、ご飯を食べた子は誰もいません」
実用音楽科の入試に合格するため、あるいはデビューするためには、痩せることが基本条件になっている――ヘインさんは、こうみる。
子どもたちもやはり、痩せるために、絶食したり、食べて吐いたり、食欲抑制剤の投薬をしているのだ。
最近のアイドル練習生は、さらに基準が厳しくなっているようだ。
イェインさんのころ「身長マイナス120」kgだった基準が、今は「身長マイナス130」kgになったと聞いた。イェインさんには、アイドルだけでなく、一般大衆に定義される「スリムさ」の基準も、ますます厳しくなったように感じられるという。
イェインさんの体型は今も、低体重のままだ。だが、街中で販売されている服を合わせれば、サイズは「ミディアム」(普通)になる。
◇ルッキズムの蔓延
ヘインさんは、社会が今、考えるべきこととして、次の点を挙げる。
「人は生まれる時、それぞれの体型・外見で生まれる。社会が“美の一定の基準”を定めているため、子どもたちがこの枠組みに自らを合わせようとして、結局、不幸のどん底に落ちることになる。子どもたちを幸せにするにはどうしたらいいか。私たちが考え続けなければならない」
今、韓国社会では、表面的な容貌だけで人を判断する「ルッキズム」が蔓延している。「この状況の中で、私たちは、お互いの容貌、体型に対して少し口を閉じるべきだ」。イェインさんは、こう訴える。
社会全般に、外見を重視する文化を一度に変えるのは困難だ。だが、人々が気軽に外見に言及するのをやめれば、少しは良い世の中になるのではないか――。
(つづく)
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