狭い空間に収容されるとどんなことが起きるのか。
裁判期間中、ソウル拘置所に収監されていたA氏は、同部屋の収容者B氏を告訴し、再び法廷に送った。就寝時間に横になるスペースが足らずに起きた争いだった。「これ以上、空けられるスペースがないのに、なぜしきりに叩くのか」。こう抗議するA氏の顔を、B氏は殴った――。
過密収容が解消されない間、拘置所・刑務所ではさまざまな暴力事件が発生している。
収容者同士の殴り合いはもちろん、事件・事故を収拾しようとして刑務官まで巻き込まれるケースも日常茶飯事だ。
2022年の矯正統計年報によると、矯正事件・事故のうち、暴行致死傷など収容者同士による暴行事件は2012年の373件から2021年には598件に増加した。収容者が刑務官を暴行する事件は2021年の43件から2021年には111件まで増えた。
収容者の事件・事故が刑事事件として検察に送致される例も多い。
全国で暴行と暴力行為処罰法違反関連罪目で送致された事件は2012年の53件から2021年には223件と4倍になった。公務執行妨害罪も2012年の53件から2021年には87件に増えた。
◇矯正成功という実益
このように事件・事故が大きく増えた原因として、「刑務所・拘置所の収容率が高いままだった」こと以外にも、▽韓国社会で法意識が高まり、小さな争いにも告訴・告発を選ぶ雰囲気が、収容施設にも広がった▽個人主義の傾向を帯びる収容者が増え、争いが頻繁になった――などを指摘できる。
だが、収容施設内外の事件・事故を減らすには、収容施設の過密状態の解消が不可欠だというのは専門家の共通した見方だ。
韓国刑事・法務政策研究院のキム・デグン法務政策研究室長は「過密収容状態に置かれた収容者は、緊張感が高まり、争いが激しくなる」と指摘する。
未決囚は初期段階では暴力性が強いのに、刑務所に比べて拘置所施設が不足している。矯正プログラムも既決囚を念頭に置いている。キム・デグン氏は「未決囚に対する矯正管理も早期に改善すべきだ」と求めている。
韓国外国語大学法学専門大学院のイ・チャンヒョン教授は「刑務所・拘置所が混宿・過密環境であるため、寝ずらい環境にあり、これが施設内暴力犯罪増加の原因だ。こうした条件では効果的な矯正が当然、難しい。矯正成功という実益のために、最小限の人権は保障すべきだ」と訴えている。
(つづく)
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