2024 年 11月 24日 (日)
ホーム特集Startup~成功のカギ走る「ドローン空母」、災害現場で「72時間の壁」に挑む

走る「ドローン空母」、災害現場で「72時間の壁」に挑む

Startup Story ~~ 成功のカギ

ドローンと個人用航空機「スンビ」 オ・インソン代表

オ・インソン代表©MONEY TODAY

ドローンと自動車。このふたつの統合管制システムが出会った。

車で目標地域まで迅速に移動させた後、ドローンを飛ばす。地上では把握することが困難な災害、災難、戦場など、それぞれの状況と地上情報を収集・転送し、指揮官の合理的な判断を助ける。

全過程は「ドローン空母」と呼ばれる「スンビ」のDMS(Drone Mobile Station)1台で可能だ。DMSは、ドローンが必要な場所ならどこでも素早く移動し、ミッションを遂行できるよう、車両とドローンが結合した統合管制システムだ。

2015年に設立した「スンビ」は、ドローンシステムや個人用航空機(PAV=Personal Air Vehicle)を製造するスタートアップ企業だ。「GENESIS」と名づけた人工知能(AI)飛行体制御技術(オブジェクト認識と障害物回避)などを独自に開発するソフトウェア技術力もある。

これまで各種の民間・軍用ドローンを製作してきたスンビにとって、2017年発売のDMSは、技術力の集大成だ。ドローン飛行制御と地上管制システム(GCS=Ground Control System)を合わせて、一つの車両に統合運用システムを構築した。

◇SUV搭載のドローン出動、自動で監視・偵察活動

既存のGCSの場合、限られた場所に各装備を設置・撤去するのにかなりの時間がかかる。ドローン―地上統制装置間の最大通達距離の範囲内で撮影された映像だけが確認できるという限界点もある。

スンビDMS-1の内部に設置されたGCS運用シーン。緑色で指定した範囲を、ドローンが偵察・監視活動をする/写真=スンビ提供©MONEY TODAY

だがGCSを搭載して車両で移動するスンビのDMSは、この問題を克服した。

現在3つのバージョンで製作され、DMS-1は5トントラック、DMS-2は3.5トントラック、DMS-3はスポーツタイプ多目的車(SUV)の形をしている。各DMS には「スンビ」が開発したドローンが搭載される。

一般的なドローンは、専用リモコンやタブレット、ノートパソコンなどを通してユーザーがリアルタイムでコントロールしなければならない。一方、DMSに搭載されたドローンは、車両のヘリポートから離陸した後、偵察・復帰・着陸を、あらかじめ設定した飛行情報に従って自動で遂行できる。

ユーザーはGCSに表示された地図を見て、移動経路をマウスで指定するだけで良い。ドローンはこれをもとに、自ら監視・偵察活動をして帰ってくる。高画質カメラと電子光学(EO)・赤外線(IR)センサーで地形や物を識別し、スマホなど向けの高速通信サービスLTEを通じて、関連の情報をGCSに伝送する。

該当領域を3次元(3D)マッピングしたり、予期せぬ障害物に出くわしたりした時、これを認知し、回避起動することも可能だ。任務遂行中に電磁波障害や干渉で交信が途絶えても、あらかじめ設定した領域の値によってドローンがすぐに復帰するようになっている。

◇「物理的な距離を克服、正確な現場判断」

スンビDMS-3の屋根開閉型ヘリポートを通じてドローンが出動準備をしている/ビデオ=スンビ提供©MONEY TODAY

DMS-1は格納庫射出式(油圧)ヘリポート、DMS-3の場合、屋根開閉型ヘリポートからドローンが離着陸する。SUVが作戦地域に移動した後、屋根を開けてドローンを飛ばす姿は、かつてアニメで見たスーパーロボットの出撃場面を思い出させる。

「災害現場や戦場での状況で正確な情報があれば、正確な判断と命令を下すことができる。DMSを通じて、あらゆる物理的な距離もすべて克服し、現場に接近できるようにしたい」。オ・インソン代表はこう強調した。

「スンビ」が視野に入れているのは――韓国型都心航空交通システム(K-UAM、Korea-Urban Air Mobility)、別名「空飛ぶタクシー」計画。韓国政府は2025年に一部路線の商用化を目指しており、「スンビ」もこれに備え、PAV商用化に拍車をかけている。

「ソウル国際航空宇宙・防衛産業展示会2021」でオ・インソン代表がPAV機体を初公開した©MONEY TODAY

先月開かれた韓国最大の航空宇宙・防衛産業展示会「ソウル国際航空宇宙・防衛産業展示会2021」で、PAVの実物機体を初公開したのに続き、仁川(インチョン)市甕津(オンジン)郡に2026年10月30日までにPAVを2機供給するという内容の協約も締結した。「333平方キロメートルのPAV特別自由化区域を認められ、思う存分、飛行実験と測定ができる。人々がこれまで地上から2Dで移動したとすれば、今後は空を含め3Dで移動できる時代になる」。オ代表の夢が広がる。

©MONEY TODAY

RELATED ARTICLES

Most Popular