韓国科学技術界は、量子技術確保のために技術先進国を盲目的に追撃するべきではないと口をそろえる。サムスン電子がメモリー半導体市場で競争優位にあるように、先進国に比べ、強みを持つ量子技術分野をきちんと選別し、国家の投資を集中しなければならないという意味だ。
◇「半導体技術で融合し、差別化を」
韓国科学技術研究院(KIST)のハン・サンウク量子情報研究団長は10日、MONEYTODAYとのインタビューで、次のように強調した。
「米国と欧州などで100年間、量子源泉技術を開発してきたが、韓国が一夜にして技術格差を縮めることはできない。量子コンピュータはまだ世界との格差が大きいが、量子暗号通信と量子センサー技術は世界的水準に近接している。その分野に我が国が強みを持つ半導体など製造業技術を融合すれば、差別化することが可能だ」
実際、KIST量子情報研究団は量子暗号通信システムの核心部品である「量子干渉計」を半導体チップにすることに成功した。この分野の研究水準は、世界トップクラスだ。量子暗号通信は、送受信者間で暗号キーを量子信号を利用して分配する技術だ。複製が不可能で盗聴・傍受を試みると、量子状態が変わり直ちに感知できる。ハン団長は「量子コンピュータ・通信・センサーに入る核心部品を半導体チップに大きさを減らしてこそ、本格的な商用化がなされるだろう」と強調した。
◇「公共半導体ファブを活用し、量子基礎研究の実用化が重要」
量子技術発展に向けた現場での課題は何か。
韓国標準科学研究院のイ・ヨンホ超伝導量子コンピューティングシステム研究団長は「超伝導量子コンピュータ素子を作る際には、半導体技術が必要になる」と指摘する。一方で、韓国は半導体強国だが、大学・政府出資研究機関研究者が量子技術開発のため、企業の半導体工程を直接活用することは難しいという。
また「現実的には、量子技術開発のために中古の半導体を活用したり、ナノ総合技術院などのような全国の公共半導体ファブ(Fab)を活用したりしなければならない」と助言した。
大事なのは選択と集中を進め、有利な分野に注力することだ。
イ団長は次のように提言する。
「韓国は量子技術の中でも、量子通信分野が世界水準と近接している。その基盤となる量子センサーは、先進国との技術格差がわずか5年程で、集中して育成することが急務だ。韓国は、基礎研究を実用化に連係させる力が不足している。個別技術は優れているが、うまく統合できていない。量子技術でも開発した後の統合が重要だ。欧州の小規模な技術強国のように、国家が人材・技術・資源・インフラをどのように効率化するか戦略を作らなければならない」
同研究院は、量子センサー分野に強みをもつ。量子磁場センサー、重力センサーなどを開発し、先端バイオ、国防分野で技術をリードしている。また、2026年までに50キュービット級超伝導量子コンピュータを開発する。米国、欧州などとの格差は大きいが、量子コンピュータは従来のコンピュータでは数百万年かかる計算を数日以内にこなせ、国家安全保障の次元で開発が必要だ。
科学技術情報通信省のチョン・ジェウク量子技術開発支援課長は「量子センサーと暗号通信分野は、出資硏究機関と企業などが技術を開発しており、競争力がある。量子コンピュータ技術は、国家安全保障とサプライチェーンの面で非常に重要であり、政策的な支援が重要だ」と話した。
(おわり)
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