50代女性の首をかんで死亡させた雑種犬を、動物保護団体が譲り受けた――このニュースが韓国で物議を醸している。安楽死させるべきだという主張と、安楽死は事故の解決策にならないという意見が対立しているためだ。
◇放し飼いの状態
京畿道(キョンギド)南楊州市(ナムヤンジュシ)で2021年5月、放し飼いの状態だった犬が、散歩していた50代女性に襲いかかり、首などをかんで出血多量で死亡させた。
検察は昨年5月、飼い主(60代男性)について、この犬を含む計49匹を違法に飼育し、管理を怠ったとして業務上過失致死などの疑いで起訴した。議政府(ウィジョンブ)地裁南楊州支院は昨年11月、飼い主に懲役1年を言い渡した。飼い主と検察の双方がこれを不服として控訴している。
南楊州市は事故後、検察からの依頼を受けて犬を「証拠物」として保護し、毎月40万ウォン(約4万2000円)の費用をかけて民間の訓練施設に委託してきた。その後、裁判所から「既に証拠物ではない」と伝えられたため、市は今月3日、それまでに購入の意思を示してきた動物保護団体「キャットチドックチーム」に売却した。
◇「安楽死は根本的な解決策ではない」
キャットチドックチームは4日、インスタグラムで「『安楽死は根本的な解決策ではない』と判断して購入・保護することに決めた。事故の原因は動物虐待の温床である不法犬農場から始まった」と主張している。キャットチドックチーム関係者も、MONEYTODAYの電話取材に「犬が悪いわけではない。犬農場の主人(飼い主)に過ちがある」と強調している。
だが、この主張に対する世論は冷たい。
農林畜産食品省などが昨年8月実施したアンケートでは「人を攻撃した動物を安楽死できるようにすべきか」という質問に、回答者3135人のうち2374人(75%)が賛成した。反対は315人(11.19%)にとどまった。20代男性は「人の首をかんで殺した犬は、より大きな事故を起こす前に安楽死させるべきだ。そうすることで、飼い主に強力な警鐘を鳴らすべきだ」と指摘している。
犬が人を攻撃して死亡させたりけがをさせたりすると、飼い主には懲役や罰金の処罰があるが、犬を安楽死させるなどの規定はない。海外では、危険性や環境などを検討したうえで安楽死を法的に認めている国もある。1991年に「危険な犬法」をつくった英国などがその例だ。
ある獣医は「安楽死が事故予防に効果があるとは考えにくい。教育や訓練が先で、それ以上に、方法がなければやむを得ず安楽死を考えなければならない」と話した。
また、ある弁護士は「犬の飼育環境改善が先決だ。人を傷つけないようにするなら、事故を起こす犬が出てくる理由を探し、それに対する政策を整えるべきだ」と主張した。
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