現場ルポ
韓国に関する海外メディアの報道が年間9万951件に及び、10年前と比べて約10倍に膨れ上がった。北朝鮮の核問題をはじめ、北東アジアの安全保障に重点を置いていた報道も、BTSや「イカゲーム」などのK-コンテンツがグローバル化シンドロームを引き起こし、「グローバルなライフスタイルに変化した韓国文化」を分析する記事が相次いでいる。
◇朝鮮半島のキーワードが「平和→コロナ→韓流」
海外文化広報院は、2017年のムン・ジェイン(文在寅)政権発足から約5年間における海外メディアの報道内容を分析した。74カ国の2006社による韓国関連報道は12万5375件で、この4年半の間に10~20%増加していたという。
分野別の比率をみると、朝鮮半島情勢が38.4%と最も高く、新型コロナウイルス対応(13.7%)▽K-カルチャー(11.6%)▽日韓関係(7.3%)▽首脳外交(6.2%)▽経済(5.6%)――という順になった。
依然として北朝鮮に関連した問題に関心が高いものの、最近では韓国を扱う際、記事の色合いが明らかに異なっている。
ムン政権2年目には「朝鮮半島平和プロセス」に代表される北朝鮮との対談が注目された一方、新型コロナのパンデミックに見舞われた3~4年目には「K防疫」と呼ばれる韓国式感染対策モデルが脚光を浴びた。4〜5年目には、K-POPや韓国ドラマなどのコンテンツが大ヒットし、「韓流」が韓国関連報道の件数増加を牽引した。
地域別に見ると、米州での報道件数の増加が目立った。ムン政権1年目と4年目を比較してみると、南北アメリカ地域での報道件数が60%も増加していた。特に、米国の韓国への関心が高まった。発足1年目には米国における報道件数は世界12位だったが、3年目からは順位を5つ上げ、4〜5年目にはそれぞれ2位、3位を記録した。
◇韓国語からBTSまで……「韓流原産地」に注目
グローバルニュースの中心地である米国が韓国に目を向けたのには、BTSや「イカゲーム」など韓流が米国で高い評価を得たこと無関係ではないという分析がある。
実際に、海外メディアは昨年から、地域問わず自国内における韓流旋風とその理由を分析する記事を相次いで掲載した。特に、ポン・ジュノ監督の映画「パラサイト」がカンヌ国際映画祭パルムドール(最高賞)を受賞したほか、Netflixで「イカゲーム」が人気を博したことを機に、韓国文化と関連した報道が急増した。政権5年目の半年間に報道された件数は3000件。政権発足直後の1年間における報道件数(1669件)の2倍に達した。
韓国文化の成長は、経済と外交にも影響を与えている。
米国や日本のメディアを中心に、日本や中国などの周辺地域とのもつれた外交関係を解消するうえで、韓国文化が効果的な手段となるだろうという社説やコラムが多数掲載された。欧米諸国では「文化的偏見をなくす契機」として、アジア・太平洋では「目指すべきソフトパワーの強化モデル」として有意義であると評価されている。
このような雰囲気から、韓国をアジアの拠点とする海外メディアも増えてきている。
アジアのメディアの中心地だった香港が、中国本土との関係でその地位を失う一方、韓流原産地である韓国でさまざまなニュースを発掘できたからだ。
米有力紙ワシントン・ポストが昨年、ソウルをロンドンとともに速報拠点に選定し、米紙ニューヨーク・タイムズはデジタルニュースの運営本部と記者団を、香港からソウルに移転した。英情報誌「MONOCLE(モノクル)」は「韓国へのトランスファー」という記事を通して、こうした雰囲気に焦点を当てた。
◇海外から見る朝鮮半島の経済、外交・安全保障の展望は
海外メディアは韓国の政治・経済に対して多様な見通しを立てている。
経済面では、新型コロナによる財政悪化のなかでも、マクロ経済指標が回復傾向を見せていると評価した。米経済誌フォーブスは今年5月に「丈夫なテフロン加工のフライパンのように強い韓国」と表現した。ただ、企業・家計負債と人口減少は、今後の経済成長と安全保障を脅かす強大な要因であり、徹底した対応が必要だという指摘が多かった。
外交と安全保障の面では「朝鮮半島平和プロセス」の推進が実りあるものであったと評価した。2018年に10年ぶりに実現した南北首脳会談は大きく意味づけられた。しかし、北朝鮮の非核化に対する懐疑論が依然として残り、韓国が推進する「終戦宣言」が実質的な成果に繋がるかどうかについても見解が分かれている。
海外文化広報院のパク・ジョンリョル(朴正烈)院長は「今回の分析を通して、K防疫と韓流コンテンツ旋風が、韓国の社会や文化に対する関心を増やす結果になっている点を確認した。取材の需要増に合わせ、今後、海外メディアにおける取材サポートの拠点として海外文化広報院を積極的に活用する」と話している。
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