1970~80年代の韓国。経済の目覚ましい成長を光とすれば、影も明確に存在している。特に当時、韓国政府と養子縁組機関が、実の両親が生きている子供を戸籍上「孤児」にして海外に送り出したことは、人権侵害として「影」の代表的な例と言えるだろう。
この64年間、海外に養子縁組された児童だけでも約16万人にのぼる。彼らのうちどれだけ多くの人が孤児だとされたのか、まともな実態調査はなかった。news1は最近1カ月間、法務省や警察庁、保健社会省の「棄児・迷子」統計と各種論文、研究結果を分析し、今はもう成人となった「孤児戸籍」養子に直接取材して、海外で取り引きされた児童の実態に迫った。
◇書類操作事例を多数確認
64年間に海外へ養子縁組された約16万人の児童のうち、相当数が実の両親が生きているにもかかわらず「孤児」だと戸籍が作成された状況が続々と明らかになっている。
特に「棄児(捨て子)と迷子の管理」という名目で、海外養子縁組制限が解除された1970~80年代の孤児戸籍作成は、事実上の死角地帯で横行したものと見られている。
「孤児戸籍」とは、家族情報欄に両親がいないと記された戸籍だ。戸籍上「孤児」に登録されれば、両親の同意を得る手続きが省略され、養子縁組機関はより簡単に子供を海外に送ることができる。
政府レベルで全数調査を実施し、不法孤児戸籍の真相を究明し、被害者支援対策を講じるべきだという声が高まっている。
◇養子縁組児と「孤児戸籍」発給数がほぼ同じ
1970~80年代にメディアに公開された警察庁と保健社会省、法務省の棄児・迷子統計に大きな差があることが確認された。孤児戸籍など、海外養子縁組に関する書類のでっち上げが疑われる分だ。
数値の違いが大きいのは1985年だ。警察庁の統計によると、棄児・迷子児童数は443人に過ぎない。ところが、保健社会省の統計では1万4230人に達している。同じ調査対象の統計なのに、保健社会省の数は警察庁の32倍以上となっていた。法務省の統計上、棄児・迷子の児童は9287人だった。
警察庁の統計は、遺棄された状態で発見された子供を集計するものだ。保健社会省の統計は、両親が子供を養子縁組機関に任せた場合も含まれている。法務省の統計は、裁判所が「孤児戸籍」を新たに発給し、海外へ養子縁組された児童数を基に集計されている。
このため、数字の食い違いから、保健福祉省と法務省の統計には、実際に遺棄された子供や迷子だけではなく、うその孤児戸籍を作成された児童まで含まれている可能性が浮かび上がる。
◇「孤児作り」疑惑
国際人権法専門家のイ・ギョンウン博士は、ソウル大学法学科博士論文「国際養子縁組における児童権利の国際法的保護」で、孤児戸籍の釈然としない部分を追跡した。
論文によると、養子縁組特例法が施行された2012年まで、海外養子縁組児童数と孤児戸籍発給数には、ほとんど差がない。海外養子縁組が最も多かった1985年(8837人)に、棄児・迷子に分類され孤児戸籍が発給されたのは9287人だった。
イ・ギョンウン氏は「海外養子縁組の数と孤児戸籍の発給数がほぼ同数だ。『孤児』に家庭を探すために海外養子縁組をしたのか、それとも海外養子縁組のために『孤児』を作り出したのか、はっきりしない」と指摘した。
国家人権委員会が昨年11月に発表した「海外養子縁組 人権状況実態調査を通じた人権保障方案研究」でも「孤児作り疑惑」は事実だったとされている。この研究結果によると、海外養子縁組者40人は当時、実の両親が生存したが、書類上孤児に分類されて海外に送られたり、養子縁組機関・児童保護所が子供は生きているのに「死亡した」と両親に通知した後、養子に出されたりしていた。
養子縁組国の規定に合わせて書類を整えるため、養子縁組機関が虚偽情報を記録し、子供たちを「法的孤児」にすることは当時の慣行だったように思われる。この場合、海外養子縁組機関のトップや第3者が後見人の資格で養子縁組の手続きに同意すればよかった。
(つづく)
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