現場ルポ
「3週2交代」――これがソウルの最前線消防署での今の勤務態勢だ。
最初の週は午前9時出勤、午後6時退勤だが、その次の2週間、午後6時から翌朝午前9時まで勤務し、その翌日に1日休むというのを繰り返す。救急隊員たちが疲労から回復し、新たな業務に復帰するには、あまりにも時間が短すぎる。新型コロナウイルス感染が拡大した後、出動回数が急激に増え、このようなハードな勤務が続いているのだ。
ソウル消防災害本部によると、救急車の出動回数は昨年47万7900件だったのが、今年は11月までで50万2200件。このうち新型コロナ感染者の移送は、昨年2万7693件から今年は4万8178件と、既に倍近くに増えている。
◇「外で10時間以上」
救急隊員Aさんは、ソウル市内のある最前線の消防署で勤務する。
新型コロナ感染者を移送するために、近隣の病院を回ったものの病床不足のため入院できず、救急車の中で11時間、患者とともに待機したことがある。通報を受けたのは午前8時半、移送終了後に戻ると午後7時を過ぎていた。
「外で10時間以上、病院を探し回ったり待機したりしていると、肉体的にも精神的にも疲れる」
Aさんはこう打ち明ける。
救急患者の移送は重要な任務だ。慣れてはいるが、車両が入れないような場所で患者を移送するのは、いまも気後れする。横たわる患者を担架に乗せ、腕の力だけでひたすら持ち上げる。さらに狭い路地を抜けて、安全な場所まで届けなければならない。それゆえ、腕と足の筋肉痛、関節痛は彼らには日常的なものだ。
Aさんはこんな話をしていた。「不眠症は基本。耳鳴りを訴える隊員もいる。みんな疲れているんですよ」
病床が空くのを待っているため、ローテーションに合わせた勤務の交代ができない。夜間に出動し、昼間に休んでいるとはいえ、昼夜逆転している状態で重労働を任されるため、回復率は落ちるばかりだ。
救急隊員たちが今、最も恐れているのは、隊員が新型コロナに感染したり濃厚接触者になったりすることだ。
「あるチームで感染者が出て隔離が必要になれば、そのチームは任務を遂行できなくなり、他のチームが代行しなければならない。われわれのチームでそういう状況が発生すれば、他のチームがヘルプに入ってくれるが、それが頻繁になれば疲労が蓄積されるしかない」。Aさんはこう危機感を募らせる。
出動時間が遅れることで、市民からの苦情も増える。「ソウルではたいてい、1つの安全センターが3つの地区を管理する。ただそれは50万〜80万世帯に相当する。たった6〜9台の救急車で、これほどの世帯をカバーしなければならないという現実を市民はわかっていない」
◇救急車の中で出産「これが現実」
ソウルの別の消防署に勤務する救急隊員Bさん。
少し前の勤務の際、新型コロナの隔離病棟を見つけ出せず、20の病院に電話して回った。また、新型コロナ感染の妊婦のための病床を確保できず、結局、救急車の中で出産することになった。「これが現実」。Bさんはこうつぶやいた。
救急隊員を押しつぶすもの――それは仕事量の多さではない。患者を守れなかったことからくる喪失感と無力感だ。「病床が不足し、救急車内でタイムリーな治療を受けることができず、心停止してしまう。そんな患者を見る時、大きな無力感にさいなまれてしまう」。Bさんは目線を下げた。
こうした事情はソウルに限った話ではない。
全羅南(チョルラナム)道のある消防署に勤務する救急隊員Cさんは、次のように証言する。
「地方では隔離病棟さえ整っていない場合があり、移送に困難がある。そうすると都心の病院から患者が集まり、その時には3〜4時間ほどの待機時間が発生する」
忠清北(チュンチョンプク)道の救急隊員Dさんは「病床が見つからず、遠く離れた江原(カンウォン)道原州(ウォンジュ)まで移送することも多い。すぐに出動できる救急車も不足しているため、3分かかる出動時間が5分に延びる場合もある」と話す。
1分1秒を争う状況で患者を乗せたのに、病床を探せない――隊員たちが最も恐れているのは、この事態だ。
意欲的に物事に没頭していたのが、極度の肉体的・精神的疲労を感じて無気力になっていく状況を「バーンアウト」と呼ぶ。Dさんはこの言葉を使いながら、次のように心中を語った。
「仕事量が多いことでのバーンアウトもあるが、患者を守れないことでのバーンアウトが、さらに大きい」
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