韓国の激辛、世界に示したK-ラーメン
◇プルダックポックンミョン
「あまりにも辛すぎる。人間が食べられるレベルではない」。韓国の食品メーカー「三養(サミャン)食品」が2012年4月、「プルダックポックンミョン(ブルダック炒め麺)」を世に送り出した時、その評判は“激辛”だった。それから10年たった今、この激辛が世界の人たちを魅了している。ラーメンの「K-フード代表」に定着したといっても過言ではない。
2017年には1億ドル(約137億円)だったプルダックポックンミョンの輸出額が2021年には3億ドル(約411億円)を超えるという驚異的な成長を見せている。海外売り上げの70%以上が「プルダックブランド」。同社のラーメン輸出はいまや韓国業界全体の約半分を占める。
この商品は、同社経営者の妻で副会長のキム・ジョンス氏のアイデアがもとになっている。
キム・ジョンス氏は2011年、ソウル・明洞(ミョンドン)で偶然、ある店舗の前を通りかかった。辛い料理を提供する店だった。若者たちは汗をダラダラ流しながらも「ストレスが解消される」と料理を楽しんでいた。その様子をみて「強烈な辛さのラーメン」の開発を思い立ったという。
2012年の発売初期、韓国での売り上げは月7億~8億ウォンにとどまった。ただ「やみつきになる強い辛さ」が口コミで広がり、3カ月で倍に。発売1年で月30億ウォン(約3億円)台を記録するまでになった。
その後、チーズプルダックポックンミョン、プルダックポックンミョン、カレープルダックポックンミョンなどのプルダックシリーズ製品を相次いで発売し、消費者を刺激した。
◇「バイラルマーケティング」奏功
特別に宣伝をしたわけではないプルダックポックンミョンがいかにして、世界の人々に知られたのだろうか――。
その秘けつを三養食品関係者が語る。
「ユーチューブを通じたバイラルマーケティング(インターネット上のクチコミを利用し、不特定多数に拡散するよう仕掛けるマーケティング手法)ですよ。きっかけは、ユーチューブチャンネル『Korean Englishman』を運営するジョシュア・キャロット氏がプルダックポックンミョンを食べることに挑戦した映像。この配信によって、激辛のインスタント麺を食べる『ファイヤーヌードルチャレンジ』が世界的に広がった」
辛さにあえぎながらも、おいしく食べる姿に視聴者が熱狂し、プルダックポックンミョンは「誰もが一度は食べてみる挑戦のアイコン」、さらには「K-フードのアイコン」になった――という説明だ。
◇中東、欧州へ販路拡大
三養食品は昨年、米国や中国など主力輸出国に販売法人を設立した。今後、ここを拠点に現地でのブランド力をさらに強固なものにしていきたい考えだ。
また、新たな市場の開拓にも乗り出す。
昨年、アラブ首長国連邦(UAE)の首都アブダビを拠点にする消費財輸出入・流通会社「サルヤ・ゼネラル・トレーディング」と、UAEでの独占供給契約を締結し、中東市場への進出を果たした。
欧州市場の攻略も進めている。欧州では着実にシェアが広がり、今年第3四半期までの売り上げは既に、昨年全体を超えている。
欧州での人気に支えられ、三養食品は10月に開かれた「第7回ロンドンアジア映画祭」にメーンスポンサーとして参加し、プルダックブランドをPRしている。
(おわり)
「韓流ブーム便乗、K-フードが海外攻略」はNEWSISのキム・ドンヒョン、キム・ヘギョンの両記者が取材しました。
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