実態調査に乗り出す韓国政府
◇社会的責任を痛感したカカオ
10月15日、韓国京畿(キョンギ)道城南(ソンナム)市の板橋(パンギョ)SKC&Cデータセンターで火災が発生し、ネット大手カカオやネイバーのサービスに障害が発生した。
カカオ全体のサーバー9万台のうち30%がここのデータセンターにあった。地下3階バッテリー室の「リチウムイオンバッテリー」のひとつで火花が発生し、火災が起こった。これによりサーバーにつながる電力線が燃え、カカオサービスが止まった。
サービスの便利さの中に隠されていたインフラの重要性が今回の事故で浮上した。独自のデータセンターを構築したネイバーと、そうでなかったカカオの運営能力の違いも比較の対象になった。
多様な産業とつながるプラットフォーム企業に何か問題が発生した場合、その影響は想像をはるかに越えるものとなりかねない――今回の事故によって、この点が浮き彫りになった。独占的な地位を持つ企業には、特に社会的責任を要求すべきだという世論が勢いを見せるのも、こうした事情が背景にある。
カカオも社会的な責任感が足りなかったことを一部で認めている。カカオのホン・ウンテク(洪銀沢)代表は「カカオトークは国民の大多数が使うサービスなので、これに見合う責務を果たさなければならない。今回の障害でカカオの社会的責任について深く考え、ユーザーが国民である点で負うべき重い責任を改めて感じた」と明らかにした。
今回の事故を受け、カカオは非常対策委員会を設け▽原因調査小委員会▽再発防止小委員会▽補償対策小委員会――を立ち上げた。事故発生の責任をとって代表を退いたカカオのナムグン・フン(南宮燻)氏は「再発防止小委員会」を引き受けた。ナムグン氏は辞任の意思を明らかにする席で「韓国のIT業界全般でこうしたことが起きないよう、強い責任感を持って臨む」と強調していた。
◇国会が規制法案
国会と政府も急いで対策をまとめた。重点に置いたのは、カカオのような付加通信事業者を放送通信災難管理基本計画に追加することだ。これまで付加通信事業者は通信災難対応の制度圏外にいたため、「第2のカカオ事故」を防ぐためには規制が必要だという指摘がその背景にある。
国会の対応は早かった。事故発生2日後の10月17日、与野党は付加通信事業者の義務を強化する3件の法案を発議した。翌日にはデータ保護のためにサーバー、保存装置、ネットワークなどの二重化および二元化を民間企業に義務付ける法案も出した。現在、国会には付加通信事業者に義務を課す法案4件が発議されている。
所管省庁である科学技術情報通信省も「第2のカカオ事故」再発防止に向け、9人で構成する「デジタル災難対応タスクフォース」チームを設けた。また同省は消防庁や関係部署と合同で今月24日まで、民間で運営中の90カ所のデータセンターの災難安全管理の合同実態点検を実施した。
同省はその結果に基づき、データセンターや付加通信サービスの災難に対する安定性を強化するため、法制度的改善を含めた総合的な政策を推進する。
◇「事故予防は難しい…」事後対策の強化が必要
企業・国会・政府が「第2のカカオ事故」予防に乗り出す一方で、専門家の間には、規制一辺倒で本当に実効性は担保されるのか、という指摘も出ている。事故は予期せぬところで起きるのが常で、そもそも法律で予防するのは不可能だ。逆に、企業に対する規制だけを強めることになりかねない。
実際、科学技術情報通信省の資料によると、2020年の付加通信事業者に対するサービス安定性確保のための義務化措置以後も▽ネイバー▽カカオ▽グーグル▽フェイスブック▽ウェーブ――など事業者のサービス中断件数は35件に達している。
成均館(ソンギュングァン)大法学専門大学院のイ・スンミン准教授は「事前にどんな法を作っても、事業をしていれば、事故が発生する恐れは常にある」との見解を示す。
重要なことは、事故が発生した時、企業が責任を免れないようにするシステムだ。利用者保護制度を強化し、企業に対する賠償責任を重くする方向に進むべきで、規制には慎重になるべきだと指摘する。
「カカオの通信障害が発生した際、市場メカニズムによって代替手段の利用率が上がり、カカオの占有率が下がった。これはむしろ、事業者が緊張感をもって関連する投資ができるようにする“格好のシグナル”とみなすこともできる」とも指摘した。
業界関係者は「現在議論されているデータ保護の二重化措置義務化法案は、付加通信事業者に経済的な負担を課すことができる。しかし、民間だけに責任を押し付けるのではなく、公共機関においても支援する方向に進むべきだ」と強調する。
(おわり)
「『カカオ不通』が残したもの」はnews1のイ・ギボム、チョン・ウンジ、イ・ジョンフの各記者が取材しました。
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