北朝鮮が2~3日、大陸間弾道ミサイル(ICBM)を含む20発以上のミサイルを発射し、朝鮮半島、日本、米領グアムを相手に事実上の模擬戦闘を展開した。北朝鮮は、米韓両国が先月31日から実施中の大規模な合同演習「ビジラントストーム(Vigilant Storm)」を口実にミサイルを次々に発射し、日米韓3カ国の探知能力をはかりにかけた。
ユン・ソンニョル(尹錫悦)韓国大統領が今年5月、バイデン米大統領とともに、外務・防衛当局の次官級高官による「拡大抑止戦略協議体(EDSCG)」をはじめとする各種の米韓間協議体の再稼動に合意している。このカギとなるのは、米国による「核の傘」の内容を具体化させることだ。
合同参謀本部によると、北朝鮮は2日午前6時51分から3日午前8時49分までの25時間58分にわたって、北朝鮮の13の広域行政区域のうち6カ所(平壌・平安南道・平安北道・黄海南道・江原道・咸鏡南道)から日本海・黄海上にミサイルを交互に発射した。これは咸鏡北道を除く、海に面した地域からミサイルを発射したものだ。これにより、日米韓の探知能力を探ると同時に、有事の際に同時多発的に各地を打撃できることを誇示しようとしたと見られる。
特に北朝鮮は3日、正常飛行に失敗したものの、対米圧迫用の戦略挑発手段である新型ICBM「火星17型」と推定される弾道ミサイルを日本海に向けて発射。2日には、短距離弾道ミサイル(SRBM)を、南北分断後初めて北方限界線(NLL)以南に落とした。
梨花(イファ)女子大北朝鮮学科のパク・ウォンゴン教授は「韓国、日本、グアムに対する低威力核兵器(戦術核)打撃能力を示している。インド太平洋域内の米国の中核基地のある地域を、戦術核搭載ミサイルで攻撃できる『能力』と『意志』があることを見せている」と述べた。
◇米「安心しろ」「信じろ」
北朝鮮のキム・ジョンウン(金正恩)総書記は、経済難にもかかわらず、「1日1000億ウォン」とされる「賭け金」を費やした挑発に乗り出した。米韓の対応レベルに限界があるという認識をもとに、「核軍縮交渉」に向けた段階を踏んでいるとみられる。
国会外交統一委員会幹事に内定した与党「国民の力」のテ・ヨンホ(太永浩)議員は「一連の北朝鮮のミサイル発射の特徴を見ると、数量的にロシアがウクライナ戦争で1日使ったミサイル発射量より多い。1日だけで約1000億ウォンのミサイルを発射したことになる」と述べた。
ユン政権が強調してきた拡大抑止が、北朝鮮に対して効果があるのかどうかも争点になっている。世宗研究所のチョン・ソンジャン(鄭成長)北朝鮮研究センター長は「EDSCG会議は開き、米国は『安心しろ』『信じろ』という話をしているが、具体的に『どうする』という話ができずにいる。北朝鮮がICBM技術が進展すればするほど、拡大抑止の実効性が弱まるだろう」と述べた。
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