ソウル・梨泰院(イテウォン)雑踏事故現場では、一度に百人単位の負傷者が発生し、あちこちで心肺蘇生法(CPR)が施された。ただ、一般人や、業務遂行中でない応急医療従事者が善意でCPRを施した結果、応急患者が死亡した場合には刑事責任を負うこともあり得る。このため、法律が「善意の行動を制約しているのではないか」との指摘も出ている。
先月29日、事故現場で、ソウルのある大学病院整形外科研修医3年目の男性は、誰よりも多くの人を助けるために必死に心肺蘇生法(CPR)に取り組んだ。「一人でも多く、命を救いたかった」と振り返る一方で、「CPRができるのに、善意によって損害を受けるのではないかと、ためらった人もいただろう」と打ち明けた。
応急医療に関する法律第5条によると、応急患者に応急医療従事者ではなく、一般人または業務遂行中でない応急医療従事者が善意で応急医療などを提供し、その結果、死傷や財産上の損害が発生した場合――故意または重大な過失がない場合、傷害に対する刑事責任や民事責任を免除し、死亡に対する刑事責任は「減免」することになっている。
だが、医療関係者の間では依然として、患者が死に至る可能性がある緊迫した場面で「刑事責任を負うこともあり得る」という解釈が、積極的な善意の医療行動を制約している、という声もある。今回の事故でも「CPRをするか迷った」という内容の書き込みが数十個、各種SNSに寄せられている。
専門家は「災難現場で、責任を負うのではないかという思いにかられて、うかつに救助活動に出られないという姿のほうが残念だ。所定の教育を履修すれば発給される『心肺蘇生術の教育履修証』を所持した一般人の場合、CPRの際、免責範囲を広範囲にするなど、法改正の必要性もある」と指摘する。
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