現場ルポ
◇住宅賃貸料が滞って譲渡訴訟
コ・ウンジョンさんの名前が再び語られるようになったのは、賃貸マンションの明け渡しをめぐるやり取りだった。
コ・ウンジョンさんは2019年1月、このアパートの賃貸契約を2年間更新した。賃貸保証金826万ウォン、賃貸料は10万4600ウォンだった。
初年度は滞りなく家賃を支払っていた。ところが、2020年12月から契約が終わる昨年12月までの13カ月間、家賃151万5240ウォンと管理費90万4050ウォンを滞納した。
結局、2021年7月に契約が解約され、退去通知が送られた。だがコ・ウンジョンさんからの応答がなく、賃貸マンションの運営主体であるSH公社は今年2月にコ・ウンジョンさんを相手にソウル南部地裁に建物引き渡しを求めて提訴した。
約4年ぶりに裁判所に現れたという。賃貸マンションの運営主体であるSH公社との明け渡し訴訟に巻き込まれたためだ。
4月までの2カ月間、コ・ウンジョンさんの家の住所に訴訟通知書が送られたが、毎回「閉門不在」の状態だった。結局、裁判だけが進められ、7月にはSHが勝訴した。8月17日と今月6日、ソウル南部地裁の登記が配達された。
その時、既にコ・ウンジョンさんは、この世を去っていたようだ。
◇繰り返される脱北者の孤独死
コ・ウンジョンさんは韓国で「比較的順調に定着した脱北者」に挙げられていた。だが数年間、周囲との関係が断絶し、人知れずこの世を去る形になってしまった。
脱北者の保護・定着支援に関する法律によると、脱北者が韓国内に転入した後、5年間は身辺保護措置が取られ、以降、審議を経て、延長の可否が決定される。
警察庁関係者は「コ・ウンジョンさんの場合、2019年に保護が終了し、延長の審議をする際に本人が拒否した。こうなれば、周期的に連絡する法的根拠がないので、コ・ウンジョンさんの状況を把握できなかった」と説明する。
統一省は「今回のような事件が発生したことに対して残念に思う。脱北者危機管理システムを再点検し、改善する」と明らかにした。脱北者の「脆弱階層」に関する調査対象に、コ・ウンジョンさんが含まれていたか、確認するとしている。
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