2024 年 12月 23日 (月)
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ある脱北者の孤独死 (上)

  現場ルポ  

今月19日、ソウルのある賃貸マンションで一人暮らしをしていた北朝鮮からの離脱住民(脱北者)の女性、コ・ウンジョン=仮名=さん(49)が遺体で発見された。写真はコ・ウンジョンさん宅の玄関©NEWSIS

◇強制的にドアを開けると白骨化した遺体

ソウルのある賃貸マンションで今月19日、一人暮らしの女性が白骨状態で発見された。女性は、北朝鮮からの離脱住民(脱北者)のコ・ウンジョン=仮名=さん(49)。長い間、社会と断絶したまま生活し、孤独な死を迎えたとみられる。

警察などによると、1年以上家賃を滞納したまま連絡がつかず、ソウル都市住宅公社(SH)が強制退去手続きのため、玄関ドアを開けると、コ・ウンジョンさんが亡くなっていたという。

冬服を着ており、昨年の冬に死亡したと推定される。国立科学捜査研究院が詳しい死因を分析している。

生前、コ・ウンジョンさんは韓国に定着した模範的な脱北者とされていたが、誰にも気づかれないまま世を去り、1年後に判明した。

◇入り口には郵便案内書だけごちゃごちゃ

今月25日、コ・ウンジョンさんのマンションを訪れた。

玄関には、裁判所の登記配達を知らせる郵便物到着案内書6枚が並んでいた。一部の文書は印刷された文字が鮮明だったが、時間が経過して文字が黄色くなり、ぼやけていたものもあった。

マンション前で会った郵便配達員(36)は「8月と10月に2回来て呼び鈴を押して名前を呼んだが、応答もなく中に人の気配もなかった」と話した。

コ・ウンジョンさんと同じ階に住んでいた住民(65)は「行き帰りに会うと挨拶して暮らした。おとなしい人だった。新型コロナ以後には付き合いはなかった」と残念がった。

この住民によると、いったん不在になると、数カ月、あるいは1年単位で、人の気配がなくなっていたという。「しばらく気配がなくても、どこかに行ってくるのかと思っていた」そうだ。

アパートの警備員は「コ・ウンジョンさんはおとなしく、口数が少ない人だった。住民はよく知っていたはずだ。脱北者の中には、他の脱北者と頻繁に連絡を取り合う人もいるが、彼女はそうではなかったようだ」と振り返った。

©NEWSIS

◇2002年に脱北、その後、看護師、専門カウンセラー

コ・ウンジョンさんは2002年に脱北した。韓国では看護師として働き、2010年から脱北者の心理・就職相談を助ける専門カウンセラーになった。

ソウルのある福祉館で2015年3月まで勤め、韓国統一省傘下の南北ハナ財団とハナセンターで2017年12月まで働き、その後、退職したことが確認された。

南北ハナ財団の関係者によると、コ・ウンジョンさんは退職する際、「これまでしたことのない勉強をしてみたい」と話していたそうだ。この関係者は「おとなしく教養のある方だった。もともと静かな方で、連絡をよくするタイプでもなかった」という。

コ・ウンジョンさんが辞めた翌年(2018年)初め、コ・ウンジョンさんの携帯電話に知人が連絡しようとしたが、既に番号が変わっていたという。コ・ウンジョンさんは生前、「米国に留学する」と話していたため、周囲は「もう外国に行ったのでは」と思っていたそうだ。

©NEWSIS

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