現場ルポ
チェ・ソンホさん(40)は1982年、メラニン色素が作られない「眼皮膚白皮症」を持って生まれた。瞳孔にもメラニン色素ができていない。チェさんはスマートフォンを目の前の10センチに当てても、ぼやけて字が読みにくい。「視力測定不可」重症視覚障害者だ。
このようなチェさんにとって、市内バスの利用は挑戦に近い。チェさんは18日午前、ソウル市鍾路区(チョンノグ)の国立ソウル盲学校に行くために外に出た。学校までは地下鉄3号線景福宮駅で降りた後、近くの停留所から7212番バスに乗って1キロ、進まなければならない。
停留所のバス到着情報案内板には7212番バスが8分後に到着すると書かれていた。チェさんはこれを読めなかった。案内板はチェさんの目線より約1メートル離れていた。チェさんは「案内板が遠すぎる。あれほどの高さだと低視力障害者には全く見えない」と苦言を呈した。
少しすると案内板から「まもなく到着するバスは1020番、7212番バスです」と音声案内が出た。
するとチェさんは「これが緊張するタイミング」という。音声案内板が案内した順に、バスが来ない場合が多いからだ。バスは通常、数台が一度に到着する。そうすると数秒以内に乗るべきバスが、停留所のどのあたりで停まるのか確認する必要がある。バスがチェさんを置き去りにして出発したことも少なくない。
チェさんは、到着したバスの側面に書かれた路線番号をそれぞれ5秒ほど眺めた末、乗るバスを見つけた。
乗客5、6人が搭乗を待った。チェさんは、乗客の列の一番後ろに立って交通カードを押す「ピー」という音を注意深く聞いた。バスごとに交通カード端末の位置は違っていた。チェさんは「ピーという音の位置をよく覚えておいてこそ、私の順番になった時に迷わずカードをかざすことができる」と打ち明けた。
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