コラム
NEWSIS イ・イェスル記者
韓国で新しい賃貸借関連法が施行されてから2年が過ぎた。韓国独特の住宅貸切制度「チョンセ(伝貰)」を巡り、借りる住宅がなくなり、大混乱が起きるとの予想もあった。だが逆に、家主が借家人を探すのが難しくなりそうな雲行きだ。
借家人が最初に家主に預けるチョンセの保証金は下落傾向にある。ただし、借家人側が有利になったかというと、それは違うようだ。
保証金の額は、既に億単位で大幅に上がっており、少し下がっただけでは、借家人にとってメリットは少ない。また、数回にわたる金利引き上げによって、保証金を支払うための資金融資を受けることも難しくなっている。
こうした事情から、借家人はチョンセよりは、毎月の家賃を払う形式のウォルセ(月貰)を選ぶ傾向が目立つ。
不動産プラットフォーム業者「ジクバン」のアンケート調査の結果、借家人の42.6%が月額の家賃払いを好むと回答した。保証金の融資にかかる利子が負担であることや、住宅価格が下落するなか、家主に多額の保証金を預けるのが不安なためだ。
今年に入り、住宅賃貸借のうち家賃払いが占める割合が50%を超えた。チョンセ保証金は下落する一方、月額の家賃は上昇傾向で、庶民の住居費負担は増えるばかりだ。
住宅を所有していない庶民が住居費負担を減らし、安定的に生活するためには、公営の賃貸住宅の役割が重要だ。韓国では永久賃貸住宅、国民賃貸住宅、ポグムジャリ住宅(政府が提供する中小の分譲住宅と賃金住宅)、幸福住宅、新婚希望タウンなど、さまざまな種類の公営住宅がある。ただ、その在庫率は経済開発協力機構(OECD)の中で10位圏内に入るほど高い。昨年の韓国国土交通省の発表によると、10年以上の長期公営賃貸住宅の在庫は約170万世帯で、在庫率は8%水準と推算される。
住宅の供給量は不足していないが、問題は借家人側の需要に合わず、空き家が多くなっているのだ。公共交通手段が不便な場所にあったり、供給世帯数を増やそうと狭い場所に建てられたりしており、人気が高まらない。
せっかく建てられた公営住宅が使われてないのは税金の浪費だ。需要と供給のミスマッチを解消しなければ、庶民を救うことはできない。政府や地方自治体も問題は認識しており、民間住宅に劣らないよう公営住宅の品質を改善するとの意思を示しており、今後の動きを注視したい。
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