◇「真実攻防」
両者の確執は「真実攻防」にまで広がった。謝罪の有無を巡る双方の立場の違いを見ると、今回の事態に対する双方の態度が明確に比較できる。
「真実攻防」の核心である「謝罪」について、クーパン側は「謝罪」という言葉がクーパン側の人間から口頭で伝えられたとしても、それは「編集権毀損に対する謝罪」ではなかったという主張だ。「互いに誤解が生じたことついての遺憾表明であって、『一方的に編集したこと』に対して謝ったというのは事実ではない」というのがクーパンの立場だ。
双方の見解書と釈明資料などを総合すれば、クーパン側は双方の交渉過程やその内容について、徹底した「非公開」を前提としているようだ。
これに対し、監督側は「事前に非公開と定めなければメディアなどに公開できる」という立場だ。クーパン側の「争いを拡大させずに穏便に解決していこう」という交渉方式には、同意していないと見られる。
◇監督版公開についての相違
監督側は、クーパンプレイのキム・ソンハン総括をはじめ、近いうちに関係者全員に対する刑事告訴を含めた法的措置をとると公表した。
8月初め、この問題が明るみに出たころ、クーパン側の謝罪などによっては交渉の余地があった、というのが監督側の説明だ。問題の本質である「監督編集権毀損」についてクーパン側が全く認めないため、法的な紛争を避けることは難しくなったというのが監督側の主張だ。
これに対し、クーパン側は、再編集した6部作「アンナ」が全てクーパンプレイでリリースされた後、監督側が問題を提起すると、8月12日には監督版を別途で公開し、作品の「進化」を試みた。
しかし、監督側は一方的な監督版公開だけでは今回の事態を解決するには至らないという立場だ。この問題を公にした8月2日から「真の謝罪」と「誤りの認定」、すなわち「監督の編集権」を尊重するよう、一貫して要求している。
クーパン側は監督版公開で対応したが、監督側の要求である「公開謝罪」はしていない。
◇謝罪は「“有罪”認定」
「クーパンが謝罪をした」という監督側の見解書に、クーパン側は逆に敏感に反応し、直ちに全面否認した。これについてクーパン側が今後、法的措置を念頭に置いて、最後まで謝罪しないようにしているという見方が法曹界から出ている。
法的紛争につながる事件の場合、謝罪とは法的な意味では「誤りの認定」「“有罪”認定」と受け取られる。クーパン側が公に謝罪をしていない状況は法的対応の一環と見られるというのが法曹界の見解だ。
これに対し、監督側は当初から、法的措置を予告しながらも「真の謝罪をするならば法的に争わないこともあり得る」という立場を最初から示してきた。
アンナをめぐる問題について、ドラマと映画コンテンツの法律相談をしばしば受けている弁護士は次のように分析する。
「監督側は法的措置を前面に出してクーパンに圧力をかけ、世論に訴えようとした。だが、実は法的闘争に持ち込むのが目的ではなく、『謝罪』を望んでいるようだ。逆にクーパンは、今後、裁判に行くこともありうるという点を前提に、敏感に状況に対応している」
監督に謝罪することは裁判につながりかねない。だから「絶対に公開での謝罪はできない」というのがクーパンの立場だ。ならば妥協の余地はもうないだろう。先述の弁護士は「結局、監督やクーパン側はこの事件を裁判に持ち込むのかどうかの判断を最終的にしなければならない状況に追い込まれている」とみる。
クーパンプレイは2020年12月、後発ランナーとして国内発のOTT市場に参入した。サッカーのワールドカップ(W杯)、プレミアリーグ、Kリーグ中継や、バラエティ番組のSNLコリアなどで急成長していた。オリジナルドラマとして発表した「アンナ」は、クーパンプレイとしてはさらに跳躍するために必ず成功させなければならなかったコンテンツだった――と業界では見ている。
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