現場ルポ
◇「疑われる注文は受け付けない」
ソウル市鍾路区(チョンノグ)清渓川(チョンゲチョン)や永登浦区(ヨンドゥンポク)文来洞(ムンネドン)の一帯に鉄工所がある。弾丸、薬室、銃身など金属部品を製造できるか尋ねてみたところ、文来洞のある鉄工所は「弾丸製造は難易度が高いが、銃はそうでもない」という。
安倍元首相の狙撃に使われたのは散弾銃のようなものだった。精密機械業者関係者は「散弾銃形態は作りやすい。だが、銃身にライフリング(銃身の内側につくられた螺旋状の溝)を施す技術は難易度が高い。銃砲類はライフリング技術がなければ粗悪品になってしまう」と話す。
弾丸が発射されると、銃身の内部において溝に沿って回転することで弾軸の安定が図られ、直進性を高めて目標物に深く突き刺さるようになる。
インターネットで3Dプリンティング図面を入手し、こうした鉄工所に発注すれば、銃が手に入るのでは――この問いに、さらに別の鉄工所関係者は「図面さえあれば、銃なんかよりも、さらに複雑な精密機械も製造できる。だが、銃身、砲身など武器類に使われそうな部品の注文がきても、そんなものをつくる業者はここにはいない」と一蹴した。
警察関係者も次のように指摘する。
「韓国で現在に至るまで、3Dプリンターによる銃器製造事件は起きていない。鉄工業界や3Dプリンティング業界に銃器類製造が違法であるということが広く知られているため、図面が手に入ったとしても、製造段階ではねられてしまう。弾丸の材料となる化学製品は政府が監視対象にしており、これを使って弾丸を製造するのは非常に難しい」
◇模倣犯を防止
韓国警察は模倣犯罪を防ぐため、ネット空間で広まる銃砲類製造マニュアルなどに対する集中取り締まりに乗り出す。
そのため、警察庁傘下の安保捜査局所属サイバー要員と全国258警察署の銃砲担当警察官、一線の捜査部署所属のサイバー名誉警察官である「ヌリコップス(Nuricops)」ら1000人余りを投入する。
現行法では、手製の銃器製造法をインターネットに掲載すれば、3年以下の懲役または700万ウォン以下の罰金刑となる。だが多くは、海外サイトを通じ、迂回してアップされるケースが多く、掲載者を特定するのは難しい。したがって、海外IPやサイトで無差別に掲載される銃器製造法へのモニタリングも強化し、迅速に削除・遮断する方針という。
©MONEYTODAY