現場ルポ
ソウル外国為替市場は23日、1ドル=1301.8ウォンで取引を終えた。ウォン・ドル為替レートが1300ウォンを突破したのは、1997~98年の通貨危機、2001~02年のインターネットバブル崩壊、2008~09年の世界金融危機の3回だけだ。韓国から生活費の支援を受ける留学生や、海外の物品輸入に頼る企業はウォン安に直撃され、脅威を感じている。
◇留学生を直撃
米ニューヨークで5年間、留学生活を送っているイさん(30)。1年前に比べ、生活費が月額350ドルも減ったという。
イさんはマンハッタンのチェルシーで友人とともに生活する。毎月、両親から250万ウォンの仕送りを受け、そこから家賃を払い、残りを生活費として使ってきた。
昨年1月の為替レートは1ドル=1100ウォンだったため、250万ウォンは2273ドル。家賃1200ドルを払っても、生活費は1000ドル以上確保でき、ぜいたくさえしなければ十分に暮らせるレベルだった。
それがウォンが1ドル=1300ウォンまで下がり、250万ウォンは1923ドルに。家賃を払えば、700ドル程度しか残らなくなる。「マンハッタンの物価では絶対生活できない。学費に小遣いまで支援してもらっている状況なのに、さらに両親の手を借りなければならない」。イさんは危機感を募らせる。
子供を米国留学に送り出そうとする親からみれば、ウォン安の影響で、現地の学費が「急騰」したように感じられる。その1人、ヤン氏(51)は「現地での学費はもともと年額5500万ウォン程度だった。それがウォン安のため、突然、6500万ウォンに引き上げられたようなもの」と嘆く。
◇スタグフレーションの可能性も
輸入会社の立場では、ドル払いで原材料などを輸入する際、ウォン換算した費用がさらにかさむことになる。同じ量を輸入しても、普段より多くの代金を支払う必要が生じるのだ。
直購族(外国の商品を直接購入する業者)は財布の紐を締めている。
韓国銀行が先月発表した「2022年第1四半期の居住者のカード海外使用実績」によると、今年第1四半期に韓国居住者が海外で使った信用・チェック、デビットカードの使用額は、昨年第4四半期より10.4%減っている。最近のウォン安を受け、こうした直購族の消費はさらに減少するとみられる。
京畿道(キョンギド)安山(アンサン)に住むイ氏(35)。米国の有名健康補助剤のウェブサイトを通じて、家族全員分のビタミンなどを購入してきた。
「3カ月ごとに400ドル分の栄養剤を買ってきた。昨年には44万ウォンレベルだったのが、最近は52万ウォン程度に跳ね上がった。カード手数料まで含めれば、さらに高くなる。当面は子供のものだけ注文したり、国内製品に乗り換えたりしようと考えている」と話した。
現在、日本円や中国人民元の価値もともに下落し、原油など原材料価格の上昇傾向も過度に、急ピッチで進む。物価高と景気後退が併存するスタグフレーションの可能性も高まっている。
世宗大経営学科のキム・デジョン教授は「2008年は為替レートが1ドル=1600ウォンまで行ったが、当時は韓米スワップという安全装置があった。今はそれがなく、下半期までドルのレートはさらに上昇すると予想されている」と分析する。
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