aespa、NCT、EXO、東方神起の「KWANGYA」
K-POPがグローバル化するなか、英語なのか韓国語なのかわからない歌詞が増えました。ネイティブでさえ理解できない韓国語の歌詞が多くなったといいます。K-POPから「韓国語」の変化を探ってみました。(シリーズ4/5)
◇韓国よりも海外でなじみのある単語
「KWANGYA(クァンヤ)」(広野=広々とひらけた野原)は実際、韓国では普段、あまり使われない。だが海外K-POPファンにとってはかなり馴染みのある韓国語の単語だ。
韓国人は学生時代に触れたことのある、レジスタンス詩人で独立運動家のイ・ユクサの詩「クァンヤ」をうっすら覚えている程度。一方、K-POPファンは「クァンヤ」という言葉にときめき、大声で歌う。
韓流を率いるSMエンターテイメントの歌手をつなぐ世界観「SMカルチャーユニバース(SM Culture Universe=SMCU)」が「KWANGYA」という単語を広めた。
SMCUは米ディズニーの「マーベル・シネマティック・ユニバース」(MCU)と比較すればわかりやすい。
各映画のヒーローがMCUで団結するように、SM所属の歌手たちはSMCUで団結する。SMCUの中心的な空間である「KWANGYA」は、SM歌手を現実と仮想でつなぐ象徴だ。
アイドルグループ「aespa」(エスパ)や「NCT」などのSM歌手たちは、以下のように歌の中で「KWANGYA」を用いている。
「絶対的なルールを守って/私の手を離さないで/結束は私の武器/『KWANGYA』に歩いていく」(aespa「NEXT LEVEL」より)
「僕の未来に伝えて/世界中とあの『KWANGYA』の上で」(NCT DREAM「HELLO FUTURE」より)
「頑固な理性に/飲み込まれたらダメ/『KWANGYA』の上を疾走して」(EXO「Don’t fight the feeling」より)
「運命という名で/歪んだ『KWANGYA』の中で/光に向かって歩いていく」(東方神起チャンミン「Devil」より)
◇「形の定まらない広い空間」
このようにSMの歌手たちの作品に共通して登場する「KWANGYA」は、その後、ストーリーテリングが加わり、意味がさらに明確になる。
KWANGYAは、SM歌手たちがさまよったり、共通の敵を求めて入ったりする「形の定まらない広い空間」として知られている。
新概念国語辞典「ウリマルセム(韓国語の泉)」(韓国国立国語院)は、名詞「広野」について「がらんとした暗くて広い野原」と解説する。外国語として韓国語を学ぶ時に利用できるよう制作された韓国語辞典「韓国語基礎辞典」(同)も「がらんとした暗い野原」という説明が記されている。SMが「広野(=KWANGYA)」の本来の意味を生かしているのがわかる。
加えて、SMがKWANGYAという単語を使う際に目を引くのは「フィールド(field)」や「プレーン(Plain)」のような英語に翻訳するのではなく、韓国語の発音通り「KWANGYA」と表現していることだ。
これによって海外ファンがKWANGYAという発音を容易に理解できた。難しいと思われる単語だが、SMCUというK-POPの娯楽文化を通じて好奇心を持つことで、こうした表現にも気軽に触れることができるというわけだ。
(つづく)
©NEWSIS