「専門の販売者も騙された」
韓国でオンラインブランド品市場が急成長するにつれ、偽物にどう向き合うかの議論も活発になっています。プラットフォーム側は偽物見極めのプロセスを強化していますが、完璧に防ぐのはまだ難しいようです。「偽物との戦争」の現場を取材しました。(シリーズ1/3)
◇「公式輸入」と言っていたムシンサも偽物
オンラインブランド品販売への信頼に亀裂が入った出来事。こういえば、すぐに思い浮かぶのは、韓国最大のファッションプラットフォーム「ムシンサ(MUSINSA)」の一件だ。
「ムシンサ」が販売した米国の有名ブランド「フィア・オブ・ゴッド(Fear of God, LLC)」の「エッセンシャル(Essentials)3Dシリコンアプリケ・ボクシーTシャツ」が「偽物」だった――こう結論づけられた。国内最大のファッションプラットフォームでさえ、偽物を区別できなかったわけで、消費者の間に混乱が広がった。
オンラインブランド品プラットフォーム3社の取引額が1兆ウォンを超えるほど急激に成長するなかで、「偽物」騒動によって根本的な危機を迎えることになったのだ。
深刻なのは、問題は「これが始まりにすぎない」という点だ。
オンラインブランド品の消費が増えて関連市場が大きくなり、需要は増え続けている。市場調査会社ユーロモニターによると、韓国のブランド品市場の規模は昨年141億ドルで、前年より5%成長した。世界7位の規模だ。
それに伴い、ブランド品の鑑定の問い合わせも増え、韓国ブランド品鑑定院によると、新型コロナウイルスの感染拡大以前と比べて100%以上増加している。
◇「複雑な流通体系に落とし穴」
百貨店で販売する公式輸入品の他にも、並行輸入、海外購買代行など多様なオンラインチャンネルができた。ブランド品販売プラットフォームのビッグ3である「マストイット(Must-it)」「トレンビ(Trenbe)」「バラン(BALAAN)」の取引額は昨年、それぞれ3500億ウォン、3200億ウォン、3100億ウォンで、合わせると1兆ウォンに迫る。新型コロナ前と比べてそれぞれ130%、600%、1130%成長した。
新型コロナ禍の長期化で海外旅行の道が閉ざされ、免税店の需要がオンライン市場に移った形だ。
オンラインでブランド品を買う消費者が増え「偽物」騒動も浮上している。リセール・中古取引業者までブランド品の取り扱いを拡大し、真贋論争が起きている。今のところブランド品販売プラットフォームが自主的に真贋を判定して販売するケースは珍しく、消費者は偽物被害に遭う可能性に直面している。
最近のムシンサ騒動は、客が公式販売先の一つである「パクサン(PACSUN)」で購入していたことから、より社会に衝撃を与えた。
ムシンサはまた、別の公式販売先である「センス(SSENSE)」の製品もやはり「フィア・オブ・ゴッド」に正規品かどうかの鑑定を依頼したが、これもやはり「偽物」との判定を受けた。
ファッション専門プラットフォームさえ本物かどうかを確認するのが難しいほど、偽造商品が精巧になったということだ。
公式流通先という点を信じて、「パクサン」や「センス」を通じて購入したほかの消費者も偽物を買った可能性がある。
ファッション業界では「複雑な流通体系に落とし穴がある」という理由から、海外直接取引も偽物のわなから完璧に抜け出すのは難しいという見解もみられる。
あるファッション業界関係者はこうつぶやく。
「有名編集ショップだからといって信じてはならない。アウトレット、編集ショップが『ブランドからホールセールで受け取った』と主張しても、物品を扱う個人の不正があり得るためだ」
別のファッション業界関係者はこうサジを投げた。
「国内大型アウトレットでも編集ショップを通じて100万ウォンのパディングジャケットの偽物が販売された事例がある。合理的な価格を追求するのか、100%正規品にこだわるのかという消費者の選択だ」
◇「安い製品は避けよ」
海外でもオンライン販売に伴う偽物流通が問題になっている。
経済協力開発機構(OECD)と英国知識財産庁(UKIPO)の共同報告書によると、EU税関が新型コロナウイルス感染以後に偽造商品を摘発した事例のうち、56%がオンライン電子商取引を通じたものだった。オフライン取引の摘発数を超えたのだ。半面、韓国ではまだ偽造商品流通に対するデータなどが不足しているのが実情だ。取り締まり、モニタリング人材も非常に不足している。
専門家はオンラインブランド品販売が増加するなかで、偽物問題はより拡大する恐れがあるとみている。
韓国ブランド品鑑定院のソン・ジガン理事は「偽物被害を避けるためには、公式売り場を利用するのが一番良い方法だ。オンラインで購入する場合、偽物補償制度があったり、ブランド品鑑定業者と提携していたりするプラットフォームを利用すべきだ。価格がとても安い製品は避けた方が良い」と助言している。
(つづく)
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