2024 年 11月 25日 (月)
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[KWレポート] 「デジタル・ノマド」ランド (4)

非正規職を選んだMZ世代

ソウル市麻浦区で配達バイクが並ぶ様子(本文と関係ありません)©MONEYTODAY

韓国で求人難が深刻になる一方で、配達アプリケーションなどの労働者はあふれています。決まった職場にとどまらず、スマホ一つを持ち歩きながらお金を稼ぐ「デジタル・ノマド(遊牧民)」。その姿を追いました。(シリーズ4/5)

◇「超短期労働」が「職業」に

ソウル市江南区に住む入試コンサルタント、A氏(26)は昨年9月、月1000万ウォンを稼いだ。1週間に120時間働いた結果だ。「職業の特性上、時期ごとに労働時間と所得が大きく変わる。所得は一定ではないが、自分の適性に合っている。望むだけ働けるうえ、時給もいい方だ。満足している」

大学卒業後、就職の代わりに「ギグワーカー」(超短期労働者)の道を選んだ。

「大企業や情報技術(IT)企業への就職も考えた。でも、健康状態が良くなく、週5日間働くという行為が大変だった。大学生の時、家庭教師や塾講師の仕事をしていた経験を生かして、入試コンサルティングとして働くようになった。自分で勤務時間を決めることができるのが利点だ」

A氏はこう強調した。

超短期労働者が増えている。MZ世代は、やりたいことをやるためには、退社を恐れない。そんな彼らが社会の重要構成員として位置づけられ、そもそも「終身雇用」が減少しているという現象が重なった――その結果だ。

新型コロナウイルス感染の影響で、在宅勤務が実施され、職場のほかに仕事を探す人も増えた。

アルバイト採用プラットフォーム「アルバモン」は、この3年間の勤務期間別アルバイト公告を分析した。その結果、1日以下のアルバイト件数は▽2020年第1四半期(1~3月)2万6724件▽2021年第1四半期4万5822件▽今年第1四半期8万3583件――だった。わずか3年で、超短期アルバイトの割合が82.4%も上昇した。

「超短期労働」は、残った時間にこなす「副業」という次元を超え、「職業」となっている。

超短期アルバイトプラットフォーム「ギグモン」は今年2月、MZ世代求職者1188人を対象に調査した。その結果によると、回答者の65.4%が正規職ではなく非正規職フリーランスとして働く意向だった。

フリー労働希望は、女性求職者(65.7%)と男性(64.9%)との間であまり差がなかった。

「超短期労働」を選択した彼らは、時間を自由に使いながら、一般サラリーマンに劣らない収入を上げている――そうだ。

◇「自分の希望する時間帯に決めることができる」

ソウル近郊の京畿道城南市に住むBさん(36)。

「1週間に6日、1日に12時間ずつ配達の仕事をしている。勤務時間を自分の希望する時間帯に決めることができる点が一番いい。父親がすい臓がんで闘病しているし、母親も体調が悪く、病院から連絡があればすぐに行けるようにしなければならなかった」

Bさんは合気道師範、トッポッキ食堂、宅配など多様な仕事をしてみて、お金を一番手っ取り早く稼げる配達の仕事を始めたという。最初の3カ月は適応期であり、月300万~400万ウォン稼いだが、今は500万ウォンだ。「事故で怪我をしたり、雨で営業できなかったりすると収入がゼロになる。だが、おおむね、高所得と自律性が保障される」

雇用労働省によると、今年1~2月の常用労働者1人以上の事業者では、月平均賃金の総額は420万8000ウォンだ。人事革新処によると、今年の一般職9級公務員1号俸は168万6500ウォン、一般職7級1号俸は192万9500ウォンだ。業種によって異なるが、超短期労働でも公務員の給料やサラリーマンの平均月給より多くの収益を上げることができる。

ただ、超短期労働者たちも、自分の仕事が「生涯の職」になりにくいということは知っていた。

Aさんは「ワーク・ライフ・バランスが重要なので、週5日働く正規職に就職するつもりは全くない」という。そのうえで「今やっている仕事が自分に合っているので当面は続ける。しかし、いろいろな仕事もしてみたいので、10年後にも同じ業種に従事しているかはわからない」と話している。

Bさんも「これから少なくとも4~5年程度、父親の病状が好転するまで配達の仕事をしたい」という。「父親の健康が良くなれば、配達の仕事をやめ、長い間夢だった自分だけのチキン屋を経営したい。もちろんお金は今のようには稼げないが、いつかは飲食業をするという考えを持っている」

専門家は、経済環境の変化と短期労働を好むMZ世代労働者らの傾向により、超短期労働市場が拡大していると分析している。今後、ニューノーマルになり得る超短期労働市場の労働者を保護する政策作りが重要だと指摘している。

淑明女子大経営学科のソ・ヨング教授は「技術環境の変化と、長期勤務より短期労働を好む労働者の選好が重なり、超短期労働市場が拡大している」とみる。「経済が安定期に入り、大手企業が新規雇用を創出できず、単純労働職がAIに代替される。そんな根本的な経済環境の変化も、短期労働市場の拡大に寄与した」と分析している。

(つづく)

©MONEYTODAY

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