中国・ファーウェイの脅威
スマートフォンから自動車まで、あらゆる電子機器に内蔵されている半導体は「産業のコメ」と呼ばれます。私たちの生活に欠かせないこの半導体をめぐり、米国と韓国が今、ギクシャクしています。日本も加えた3カ国の思惑をわかりやすく解説します。(シリーズ5/計6回)
米国が日本に続き、友好関係にある韓国や台湾の半導体企業の手綱を引き締めるのには理由がある。
唯一の競争国として浮上した中国の成長をけん制しなければならない。そのうえで自国の自動車とIT産業の安定維持のためには「半導体ヘゲモニー(覇権)」を握る必要がある。この考えを米国が強く抱いているのだ。
人類は、地球を覆う窒素や酸素を吸いながら生存している。また、さらなる進化のために、半導体の材料であるシリコン(ケイ素)も欠かせない存在になった。また、力の根源は「知ること」にあり、今の時代はその「知」の根源が半導体から生まれるということもわかっている。米国が、友好国の通信網を掌握する中国の通信機器大手・華為技術(ファーウェイ)への半導体供給をやめ、同社の勢力拡大を阻止したのも、これが理由だ。
ファーウェイが第5世代移動通信システム「5G」を全世界の通信会社に供給するようになる――これは米国にとって大きな脅威だ。それゆえ、トランプ政権時代、米国は友好国にファーウェイ製を買わないよう圧力をかけ、既にファーウェイ製を使用している企業には毎年のように「いつまで使うのか」と圧迫してきた。
オランダの半導体製造装置大手ASMLホールディングに対する圧力もこの延長線上にある。同社の主力製品である極端紫外線(EUV)露光装置は、先進的な半導体の製造に不可欠といわれる。米国はASMLに対し、この装置を中国に供給しないよう圧力をかけた。半導体が国家戦略産業である米国にとって、中国の勢いを削ぐことは不可欠なのだ。
もし、中国が半導体の覇権を握れば、その力はさらに強くなり安全保障上の脅威になる。米国側にはこの意識が強い。中国の半導体企業・清華紫光集団(清華ユニグループ)が破産に追い込まれたのも、米国の圧力と無関係ではない。
(つづく)