現場ルポ
「普段より売り上げが50万ウォン多くなりましたよ」。Aさんはこう言いながら、満面の笑みを浮かべた。Aさんはカラオケ店「K(仮名)」店主。店は、ソウル市麻浦(マポ)区の弘益(ホンイク)大近くの繁華街にある。
新型コロナウイルス感染が拡大して以後、夜の営業がほとんどできなかった。だが、韓国政府がまん延防止のための防疫指針を変更し、多重利用施設の営業時間を「深夜0時まで」と緩和し、制限人数も「10人」とした。
その初日となった4日、久しぶりに売り上げが戻り、Aさんは胸をなでおろした。
カラオケ店――新型コロナで最も被害を受けた業種の一つだ。密閉された空間であるがゆえ、感染拡大の初期段階から飛沫感染が急増。それに伴い、客足は途絶えた。
カラオケ業の特性上、客が増えるのは深夜10時~11時以降。2次会、3次会でのサラリーマンの利用が殺到するためだ。それが、ソーシャルディスタンス確保の一環として営業時間が午後9時までに制限され、「ピークタイム」に通常のような営業ができなくなった。
Aさんはこう期待を寄せる。
「今回の営業時間が広がったので、客は確実に戻ってくるでしょう。その証拠に、きょうは、売り上げが最も少ないはずの月曜日にもかかわらず、売り上げが伸びている」
一方、他の業種では、現時点では、ソーシャルディスタンスの緩和効果を実感できていない、という反応が多かった。弘益大のN焼肉店従業員Bさんは「営業時間が伸びたからといって、売り上げ増につながるわけではない」と話す。別の店では「うちには午後10時半以後、客の入りはほとんどない。人件費を考えたら、営業時間が伸びて損をしている」という嘆きも。
同じ時間帯、ソウル市中区(チュング)乙支路(ウルチロ)をみてみる。スケトウダラの干物を提供するノガリ横丁も状況は同様だ。
ほとんどの店では客は1、2組だけ。ここで飲み屋を営むCさんは「営業時間制限がなくても、平日には午後10時30分以降、追加のおつまみ注文がほとんどない」と残念がる。
別の店を経営するDさんも「営業時間延長はあまり役に立たない」という。「どうせ夜明けまで営業できないので午後11時には厨房を閉める」という。
かつて、営業時間が午後9時から10時に延長された時、売り上げはやや上向いた。だが、その後、1時間ずつ延長されても「大した効果はない」というのが実感のようだ。
弘益大前の通り。午前0時が過ぎると、付近の居酒屋で飲んでいた人々が家路に向かった。ただ、客を送り出す従業員の表情は明るくなかった。
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