映画「パラサイト」から始まり、米動画配信大手ネットフリックス(Netflix)オリジナル「イカゲーム」まで、韓国産の大衆文化コンテンツがグローバル市場を掌握し、韓流を見つめる海外の視線が変わってきている。グローバルOTTの怪物、ネットフリックスの影響により自国のコンテンツの生態系が衰えていると懸念するスイスでは、韓流ブームを引き起こした韓国を模範事例にして解決の糸口を模索している。
スイスで活動中の韓国国際文化交流振興院(KOFICE)のパク・ソヨン韓流通信員は最近、スイス政府が提案した新しい映画法に注目した。
「レックスネットフリックス(Lex Netflix·・ネットフリックス法)」。こう命名された法案は、OTTなどのストリーミング企業がスイスから集めた収益金の4%を、スイスの映画製作産業に投資することを核心にする。来月の国民投票を実施する予定で、該当法案でスイスの映画業界全般が動揺している。
ネットフリックス法は、スイスの映画・メディア産業の危機を受けて打ち出された解決法だ。
新型コロナウイルスの余暇代案として浮上したネットフリックスは、スイス人の文化生活に相当な変化をもたらすと同時に、副作用も生んだ。現在、スイス国内のネットフリックス利用者は全国民の30%に当たる280万人。OTTを通じた映画・ドラマ視聴が活性化する一方、スイスの映画業界は低迷を重ねている。ネットフリックスでスイスの作品はほとんど見つけられないくらい、注目を受けていないからだ。
スイスの映画関係者が、少ない投資額でも地道な活動を続けていている。ただ、市場の主流となったネットフリックスなどのOTT競争で、多くのグローバル作品に押され、成長エンジンが途絶えている。
パク通信員は「スイス映画のネットフリックスでの公開は、ほとんど見つけることができない。マスコミでも“スイス人もあえて探そう”と指摘している」と説明した。
こうした事態を受け、スイス政府が映画産業の回復のために保護政策を打ち出したのだ。
背景にはスイス国内で最近巻き起こっている韓流ブームがある。
今年初め、ネットフリックスが韓国コンテンツに5000億ウォン以上を投資したと発表した。韓国がハリウッドのような主流市場ではないものの「イカゲーム」をはじめとするメガコンテンツが相次いだことで、スイス国内では韓国文化産業の成功要因を分析することに力を注いでいる。
スイスのメディアは、韓国の長期間に及ぶ映画産業への投資や自国産業の保護を、韓流を形成してきたと指摘する。
スイスのドイツ語公共放送SRFは先月、「韓国は世界的な文化強国に生まれ変わった。1997年に東アジアの経済が揺らいだころ、韓国政府は文化産業の輸出を強く奨励した。数十年間、韓国の映画産業は政府の保護と奨励によって国際的な成功を準備してきた」と分析した。
実際、韓国は1990年代から、文化輸出を奨励し、コンテンツ産業を集中育成した。
当時のキム・ヨンサム(金泳三)政権が映画「ジュラシックパーク」が、収めた収益は現代自動車150万台の販売額に相当する、として映画産業への投資を奨励、続くキム・デジュン(金大中)政権は、各大学にコンテンツ関連学科を設けて日本文化を開放し、韓流の礎を築いた。また、1996年から10年間適用された146日のスクリーンクォーターは、当時、全世界最多日数として挙げられる。
パク通信員は「2019年、ヒョンビンとソン・イェジンが主演した『愛の不時着』がスイスで撮影されたことから、スイスで韓国ドラマに対する関心が高まった。『イカゲーム』がトップに立ったことから韓国文化産業に対する分析が後を絶たない」と指摘する。そのうえで「スイスも映画『Unruhe(Unrest)』の制作者であるシリル・ショーブリン監督が独ベルリン国際映画祭で受賞するなど、スイス映画の可能性を立証している。だからこそ、ネットフリックス法の投票に期待してみるだけの価値はある」とみている。
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